2014年7月17日木曜日

映画「清州会議」:三谷幸喜の意外にも正攻法な清州会議解釈

映画「清州会議」をDVDにて鑑賞。

清須会議 Blu-ray スタンダード・エディション
東宝 (2014-05-14)
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三谷幸喜作品である。

本能寺の変のあと実際に行われた、織田家の跡目決めと領地分配の会議が題材となっている。
かつて、何度もドラマや映画に取り上げられた題材で、三谷幸喜がどのようにこの「よく出来た」お話を処理するのかに興味がわく。

誰もが跡目争いの候補としてノーマークだった当時2歳の三法師を、まんまと自分だけに懐かせ、抱きかかえて登場した秀吉が「殿の御前であるぞ、頭が高い」と抵抗勢力である柴田勝家を押さえつける清州会議のエピソードは、史実にしては出来過ぎた演出が施されているように感じる。
秀吉が登場するエピソードは、彼が天下人となったあとに「書かせている」いくつかの太閤記が下敷きになっているものが多く、実際どうであったのかはすでに判然としないものが多いのだ。

中でも特に清州会議は怪しい。

まず、三法師が跡目争いの本筋であると、秀吉だけが気付いていたというのが普通に考えておかしい。
三法師は信長の長男の嫡子なのである。
また次男・三男はすでに養子に出ている。
おそらく最初から三法師が筆頭候補であったはずだ。

また、会議が清須で行われた理由も、当時三法師が清州城に滞在していたから、と考えたほうが自然すぎるほど自然だ。

「十二人の怒れる男」を正反対のアプローチで舞台化した三谷幸喜が、この演出過多な「実話」をどのようにおちょくってくれるのか、を期待したわけだ。

しかし三谷幸喜は、本作品においては正攻法のアプローチで、仕掛けとしては柴田勝家を人情味あふれる昔気質の武士、秀吉をビジョナリーに仕立てて、時代の変わり目を生き抜く男たちのドラマとしてみせた。
また、その裏で、これまた昔気質な色仕掛けで運を引き寄せようとするお市と、現代的な謀略で最大の利益を生み出した松姫の相克をも走らせ、見事な現代劇に仕立てている。

思えば、三谷幸喜はすでに日本有数のヒットメイカーなのであって、僕が期待したようなオルタナティブな表現は、若い野心家に望めばいいのであった。


それにしても剛力彩芽にこの役は酷であった。
なにしろ麻呂眉にお歯黒。
どんな美人でも、そうとう厳しいものになる。
しかしだからこそ、最後の見せ場の演技で、あの「歯」は効いている。
かわいそうな気もするが、ちょっとゾッとしてしまった。

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