彼女が1973年に発表した5作目のアルバム『Fantasy(ファンタジー)』は、全米トップ5を記録しながらも、前作までのポップ/フォーク路線とは一線を画す実験的なアプローチから、時に「異色作」と評されているようだ。
しかし、本作はキャロル・キングのアーティスト史において最も瑞々しく、当時のブラックミュージックへの敬意に満ちた「隠れた最高傑作」である。本稿では、彼女のキャリアにおける本作の位置付け、ミュージックシーンへの影響、そして本作のサウンドを決定づけたギタリスト、デヴィッド・T・ウォーカーの貢献について深く掘り下げていく。
しかし、本作はキャロル・キングのアーティスト史において最も瑞々しく、当時のブラックミュージックへの敬意に満ちた「隠れた最高傑作」である。本稿では、彼女のキャリアにおける本作の位置付け、ミュージックシーンへの影響、そして本作のサウンドを決定づけたギタリスト、デヴィッド・T・ウォーカーの貢献について深く掘り下げていく。
キャロル・キングのアーティスト史と『Fantasy』の背景
キャロル・キングのキャリアは、1960年代のブリル・ビルディングにおける稀代のヒットメイカー(作曲家)として始まった。その後、1970年代のシンガーソングライター・ブームの主役に躍り出た彼女は、内省的で親密なアコースティック・サウンドを確立する。
その頂点が『Tapestry』であったが、彼女は同じ路線の踏襲に甘んじなかった。
1973年当時、アメリカのミュージックシーンではマーヴィン・ゲイの『What's Going On』やスティーヴィー・ワンダーの諸作に代表される「ニューソウル・ムーヴメント」が吹き荒れていた。
この黒人音楽の地殻変動に敏感に反応し、自身の瑞々しいメロディセンスと融合させて生み出されたのが『Fantasy』である。
本作は、彼女のキャリアにおいて初のコンセプトアルバムという形態をとっている。
本作は、彼女のキャリアにおいて初のコンセプトアルバムという形態をとっている。
アルバムは弾き語りの『Fantasy Beginning』で幕を開け、様々な人生の情景を描きながら、最終曲『Fantasy End』へと回帰する。
全編を通して曲間が途切れることなく流れるように展開する構成は、当時のポップス界においても極めて野心的な試みであった。
『Fantasy』が音楽史において重要なのは、白人女性シンガーソングライターが、単にソウルミュージックを「模倣」したのではなく、一流のクロスオーバー/ジャズ・ミュージシャンたちと対等にセッションを行い、「ブルーアイド・ソウル」の新たな地平を切り拓いた点にある。
本作のサウンドは、緻密にアレンジされたホーンセクションと、ファンキーでありながらも洗練されたリズム隊によって支えられている。このアプローチは、後のAOR(Adult Contemporary)の先駆けとなり、日本のシティポップ(City Pop)の源流の一つとしても多大な影響を与えることとなった。
本作の評価を決定づけている最大の要素が、名ギタリスト、デヴィッド・T・ウォーカー(David T. Walker)の参加である。当時、ODE RECORDSのレーベルメイトでもあった彼の存在は、アルバムに決定的な魔法をかけている。
特にその貢献度が顕著に現れているのが、2曲目の『道 (You've Been Around Too Long)』である。
ミュージックシーンへの影響:ポップスとソウルの架け橋
『Fantasy』が音楽史において重要なのは、白人女性シンガーソングライターが、単にソウルミュージックを「模倣」したのではなく、一流のクロスオーバー/ジャズ・ミュージシャンたちと対等にセッションを行い、「ブルーアイド・ソウル」の新たな地平を切り拓いた点にある。
本作のサウンドは、緻密にアレンジされたホーンセクションと、ファンキーでありながらも洗練されたリズム隊によって支えられている。このアプローチは、後のAOR(Adult Contemporary)の先駆けとなり、日本のシティポップ(City Pop)の源流の一つとしても多大な影響を与えることとなった。
サウンドの核:デヴィッド・T・ウォーカーという「星屑の煌めき」
本作の評価を決定づけている最大の要素が、名ギタリスト、デヴィッド・T・ウォーカー(David T. Walker)の参加である。当時、ODE RECORDSのレーベルメイトでもあった彼の存在は、アルバムに決定的な魔法をかけている。
特にその貢献度が顕著に現れているのが、2曲目の『道 (You've Been Around Too Long)』である。
楽曲 | サウンドの特徴とデヴィッド・T・ウォーカーの貢献 |
Fantasy Beginning | キャロルのピアノ弾き語りによる内省的な導入部。 |
道 (You've Been Around Too Long) | イントロからデヴィッド・T・ウォーカーのギターが炸裂。 まさに「星屑が煌めくよう」と評される、特有の流麗なハープ風のチョーキングとオクターブ奏法が、ニューソウル的なグルーヴを極上のものへと昇華させている。 |
キャロル・キングの力強くもハスキーなボーカルと、デヴィッド・T・ウォーカーの甘くエモーショナルなギターフレーズとの対話は、本作のハイライトである。彼のギターがあるからこそ、本作は単なるポップスアルバムに留まらず、時代を超越したソウル・ジャズの薫り高い名盤として今なお愛され続けている。
オーディオファイルの視点からも、本作はハイクオリティな録音盤(SACDシングルレイヤー盤や高音質復刻紙ジャケット仕様など)として度々再評価されている。
『Tapestry』の素朴なキャロル・キングしか知らないリスナーにとって、本作『Fantasy』は新鮮な驚きに満ちているはずである。
総括:今こそ再発見されるべきコンセプトアルバム
オーディオファイルの視点からも、本作はハイクオリティな録音盤(SACDシングルレイヤー盤や高音質復刻紙ジャケット仕様など)として度々再評価されている。
『Tapestry』の素朴なキャロル・キングしか知らないリスナーにとって、本作『Fantasy』は新鮮な驚きに満ちているはずである。
デヴィッド・T・ウォーカーの至高のギタープレイ、そして70年代初頭の空気感を凝縮したニューソウル・サウンドを、ぜひじっくりと堪能していただきたいと思う。

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