TANNOYをよく知る人たちは、私がGreenwichを使っていると知ると、必ずといっていいほどモニターゴールドの入ったIIILZというスピーカーを薦めるが、音は聴いたことがなかった。
どんなすごい音がするんだろうといつも思っていたのだが、お持ちの方にお願いしたら聴かせていただけるというので有り難くお邪魔した次第。
さらにかの有名な300Bという真空管を使ったアンプを導入されたとのことで、真空管アンプユーザーの端くれとしてそちらもぜひ聴いてみたかったのだ。
よく、「レコードにこんな音が入っていたのか!」という記述を雑誌などで見かけるが、日曜に聴かせていただいた音はまさにそういう体験だった。
さらに私のいつも聴いている音と一番違うのは「音量」で、愛聴しているベートーヴェンのピアノ協奏曲4番のCDを持っていったのだが、ウチのシステムではちょっとヒヤッとするほどピアニストが高ぶって弾くところがあるのだが、先輩のシステムではなんなく再生されたところをみると、高ぶっているのではなくてウチのシステムが追いついていけないだけだったのだと思い知った。
そういうわけで、その日からこんなもんだろうと思っていた自分のシステムにまだ先があるような気がして、初心に返って試行錯誤している。
で、勉強のためにTANNOYファンなら誰しも一度は訪れたことのあるはずの「GRFのある部屋」という個人ブログを見ていた。
ふんふん平行法ね、ほうほうCDをそんなふうに!とかまだまだ色々試していないことはあるもので、理解ったふりをしないで試してみようと思って読み進めていると、なんと10月7日に元NHKのディレクターとして小澤征爾さんの番組なんかを作っていた小林悟朗さんが亡くなったという記事を見つけた。
ご病気だったのだろうか。確かまだ50代後半くらいではなかったか。
現在はフリーでオーディオに関する執筆もかなり意欲的に行われていて、先月発刊の雑誌でも小林さんの記事を読んだばかりだ。
オーディオ誌の記事というとどうしても機械から出てくる「音」云々の話になりがちだが、小林さんの記事は完全に音楽サイドからの言葉で素直に頷かされる。
特に、ビクターのSX500DEという安価だが優れたスピーカーを、ご自身の「ゴトー」という素人にはまともな音を出すことさえ難しい巨大スピーカーシステムの前に置かれて、マニアユーザーの電源ケーブルよりも安価なスピーカーから出ているこの音が「人を正気にする音」だ、と書かれた記事には本当に衝撃を受けた。
オーディオ誌でそんなこと書いていいのか!でもそうだよなあ、と思い、いろんな所で「人を正気にする音」というフレーズを使わせていただいた。ここに盗用を告白し謝罪いたします。
しかし使わせていただいた手前、小林さんのこのご遺志、微力ながらも引き継いでいきたいものだなあと思う。
まずは、自分のスピーカーと感性を信じることから始めよう、と決めてボリュームをぐいっと上げた。
アルゲリッチの演奏するファリャの「スペインの庭の夜」が思いの外、大きな音像で鳴り響く。まだ追い込みが足りないが、やはりまだまだ引き出せていなかった自分のシステムの力の片鱗が垣間見えたような気がした。
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