小学4年生のとき、友達の家でお姉さんのものだというBay City Rollersのレコードを聴いた。
胸が震えた。
レコードを買ってもらって、何度も聴いた。
歌詞を聞き取っては父にもらった大学ノートに、カタカナで書きつけた。
自分で歌いたくて外に出て大声で歌った。
ちっとも恥ずかしくなんてなかった。
胸はもっと大きく震えていた。
僕は今もあの時の胸の震えを探して音楽を聴き続けているのだと思う。
はじめて買ってもらったレコードはBay City Rollersの二枚のアルバムだった。
その時点での最新アルバム「青春に捧げるメロディー」とベスト盤である「ニュー・ベスト」の二枚。
この「青春に捧げるメロディー」というアルバムは本当に素晴らしかった。
名プロデューサー、ジミー・イエナーの仕掛けたポップの宝箱だ。
一曲目がエリック・カルメンの在籍したラズベリーズの永遠の名曲「レッツ・プリテンド」。そしてダスティ・スプリングフィールドのヒット曲「二人だけのデート」。ビーチ・ボーイズのポップなラブソング「ドント・ウォリー・ベイビー」。
これらのナイスなカバー曲だけでもかなりクラクラだが、彼らの本領はグラム・ロック・バンドとしてのハードなサウンドにあるのだ。
「ロックン・ローラー」「イエスタデイズ・ヒーロー」のオリジナル曲2曲をお聴きいただければ、このバンドがアイドルバンドだったなどとはいえないはずだ。
実は僕も武道館でのコンサート映像を見て、「演奏してねえじゃん」と思ったのだが、一昨年ふとしたことで知り合ったBCRファンから新潟公演をこっそり録音したテープを聴かせていただいて、明らかにかなり演奏力の高いバンドであったことを自分の耳で確認した。
僕はその素晴らしい歌をどうしても自分で歌ってみたくて、歌詞カードにレコードから聴き取った発音をカタカナで書き込んで英語で歌う練習をしたのだった。
歌うとますますその歌が好きになった。
学校の休み時間にもずっと歌を歌っていた。
街を歩いているときも。
小学校の遠足のバスで目的地につくまで歌合戦をしようということになった時も真っ先に手を上げてツイストの「燃えろいい女」を歌った。担任の先生が審査員のその歌合戦で僕は優勝して、商品に図書券500円をもらったのだ。
今思えばその図書券は先生の自腹だったのだろうなあ。
その担任の先生も先日亡くなってしまった。
遺品を整理していたら、「お葬式にかけて欲しい音楽」というメモがでてきて、伸之助くん(私のことです)の「雨宿り」と書いてあったとお嬢さんから聞いた。
さだまさしさんのコミカルなのにじーんとくる名曲で、当時よく校庭で歌っていたお気に入りのレパートリーだ。
そんなことまで憶えていてくださってありがとうございます。
天国の先生のために、これから何度でも歌います。
音楽はいつだって人の人生の傍らにあり、その瞬間瞬間を彩っている。
そしてその彩りはとても深く胸に刻まれている。
だからそれは、ただの趣味ではないし、ましてや消費財では決してない。
明日からも、あの日見つけたこの胸の震えを探して歩いて行こう。
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