北海道新聞の書評論に背中を押されて『シナモンとガンパウダー』を読んでみた。
大英帝国の三角貿易を主題に採り、アヘン貿易を阻止しようと奮闘する女海賊と、彼女が拉致した貿易会社会長付きの料理人とのドラマには、最後までハラハラさせられ通しだった。
2022年、大英帝国のコロニアリズムが生み出した様々な歪みは、またしても幾度目かの臨界を迎えつつあるように思われる。
そんな年の終わりに読んだ本作は、今我々が置かれている状況が、対症療法でなんとかなるようなものでないことを教えてくれた。
そしてこの歴史的悲劇を見事に描き切った本作の美点は、経験と本能に忠実な海賊と敬虔なキリスト教徒である料理人の「視点の差分」なのだろう。
その差分を超えていく「人間」という存在に愛おしさを感じずにはいられない。
大傑作。
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