2016年9月12日月曜日

現実になった原発事故がリアリティを剥ぎ取り、この映画はアートになったのかもしれない〜『原子力戦争 LostLove』

古い日本の映画を観ていくと、「日本アート・シアター・ギルド」制作の作品に多く行き会う。これはさすがに違うだろうと思って観始めた「原子力戦争」のオープニングにも「日本アート・シアター・ギルド」の名が出てきてびっくりした。
しかし考えてみれば監督は黒木和雄さんなんだからちっとも不思議じゃないですね。
で、黒木映画でおなじみの阿藤海さんとか、浜村純さん(浜村淳じゃないですよ)とか、名脇役が脇を固めている。



そしてこの映画、当ブログではお馴染みの虚淵玄さんのお父さん和田周さんが出てますね。

出番は少ないが重要な役。
役者和田周さんをはじめて観ました。


映画は田原総一朗さんの小説を原作にしたもので、福島第一原発を舞台に、燃料棒の事故とそれを揉み消そうとする東電、暴こうとするマスコミ、地域の利益のために板挟みになる住民たちを描いている。

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実際に苛烈な事故が起きてしまった今となっては、この映画に描かれていることをリアルに体感してしまったわけで、驚きはない。
しかし、事故そのものでなく、あくまでもそれぞれの人間が組織の都合や個人の情熱にフォーカスしていて、社会で起きているいろんなことに、正しい答えなんてどこにもないんだということを痛感させられる。
もしかしたら、現実になった原発事故がリアリティを剥ぎ取り、この映画は「アート」になったのかもしれない。

そして僕は動いてる山口小夜子さん、はじめて見たよ。


スティーリー・ダンの「エイジャ」のジャケット写真くらいでしか見たことなかったから。

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映画の中で砂浜歩いてたりするんですけどね。もうそこ(だけ)パリコレ?っていう感じなんですよ。

ホント、現実感カケラもないです。

対比的に、若き日の風吹ジュンさんもいい味出してる。
こっちは現実に閉じ込められているッて感じの不思議ちゃんキャラで、それがまたカワイイ。


原田芳雄さんは、黒澤映画における三船敏郎さんのような存在感ですなあ。


役割としての「ヒモ」をステレオタイプで演じているんだけど、物語が進んでいくと「自分自身」がどうしようもなく溢れでてしまう感じ。
カッコよかった。

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