今年は正月休みを長めに頂いたので、年末年始の忙しさに、休日はあっても毎年行けずにいた中古レコード店の年末年始バーゲンに行ってみた。
狸小路のフレッシュエアーというお店だ。
ただでさえ狭い店内に、コレクターと思しき人たちが大量にレコード棚に張り付いて、すべてのレコードを一枚一枚検分していた。
私のような半端者が一緒になってレコードを漁るのを拒絶するオーラが皆さんの背中から放射されていた。
レコード棚の間の通路は人がすれ違えるほどの隙間もなく、いろいろと迂回しながら思い定めていたマイルズ・デイヴィスの棚にようやく取り付いて、今年これだけは絶対買おうと思っていたE.S.Pを見つけ、隣にあったIN BERLINと二枚抜いて、また迂回してレジへ。
30%OFFと50%OFFの盤、二枚で1330円でした。
安いなあ。
MILES IN BERLINは、ウェイン・ショーターを正式メンバーに迎えての初めてのライブ録音。そしてE.S.Pは、やはりショーターを迎えて初めてのスタジオ録音となる。
ショーター加入直前のライブ盤が「フォー・アンド・モア」と「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」でテナーはジョージ・コールマンが吹いている。マイルズの凄まじい集中力が感じられる名演ライブで、「マイルズの」演奏を聴くための最上のライブアルバムといってもいいだろう。
しかし、ショーター加入直後のこの二枚は、マイルズのクインテットが、明らかに新しい次元に飛び込んだこと示す、それまでの「ジャズ」には含まれていなかった芳香のようなものを放っている。
IN BERLINでは、それはまだ未完成で萌芽が感じられる、といった程度だが、そのかわり、ショーターの才能に刺激を受けたマイルズが、恐ろしいほど先鋭的に分解された「枯葉」を吹き、ショーターが逆に縮こまっている様子が見える。
それにしても、キャノンボール・アダレイのサムシン・エルスで、あれほど歴史的で決定的な「枯葉」を吹き込んだ後で、しかもライブでそれをまた解体してみせるなんて。
いったいどれほどの才能なのか。
このライブ盤で聴かれた才能の相克を見事にクインテットのサウンドに昇華してパッケージしたのがE.S.Pというアルバムである。
よくアーティストの音楽性はその楽歴の中で、結局ファースト・アルバムに収斂していくと言う。
ショーター加入後のクインテットは、マイルズの長く華やかなキャリアの中でも特別な音楽性を持つものだ。
ネフェルティティを経由して、イン・ア・サイレント・ウェイ、そしてビッチズ・ブリューへと続いていく快進撃のエッセンスのすべてがこのE.S.Pに収斂していくのである。
やはりマイルズというのは、別格の音楽を作る。
今年は少しフュージョンを聴いてみたいと思っていたが、やはりフュージョンを聴くにしてもマイルズ研究の視点から入ってみたほうがいいような気がしてきた。
ジョン・マクラフリン、ジョン・スコフィールド、マイク・スターン。
マイルズを取り巻くギタリストたちが卒業後残してきた足跡を追ってみたい。
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