『暗闇坂の人喰いの木』で島田荘司作品の講談社文庫改訂完全版は、5作品目になる。
再読の良い機会だが、『暗闇坂』はすでに4回目の再読となる。
犯人がわかっているのに、ミステリを再読する意味はない、という人もいるだろう。しかし自分にとっての『暗闇坂』は、人生が思わぬことで行き詰まり、自分を見失ってしまいそうになる時、何度も本棚から取り出して読み返す、そういう物語なのだ。
『暗闇坂』を読んでしまうと、どうしても『水晶のピラミッド』に手が伸びるのは、松崎レオナに逢いたいからだと告白しよう。
その意味では『アトポス』が重版されず入手不能状態なのは困ってしまう。ぜひ改訂完全版で復刊を。
で、本作。大仕掛けで知られる島田作品の中でもかなりの仕掛けっぷり。
張り巡らせる合理の網に、読者である我々を見事な手法で絡めとるが、並行して描かれるギザとタイタニックの物語が、この合理の網に豊かな詩情を添えるのだ。「巻を措く能わず」とはこの本のためにある言葉で、こちらも4回目の再読になるが734ページを2日で駆け抜けた。
そして『眩暈』
例の大仕掛けだけは、どうやっても頭から消えるはずもなく、流石に驚けないだろ、と思ってた訳だが、わかって読んでいるからこそ別の細部に驚きまくりで、ページが止まらず一気読みとなった。
今は無性に次作『アトポス』が読みたいが、絶版で入手困難。これを好機と捉えて、御手洗再読祭りを一旦収めようと思う。
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