2015年4月9日木曜日

フォーシーズンズの光と影~「ジャージー・ボーイズ」クリント・イーストウッド

フォーシーズンズの名前を初めて知ったのは小学校4年生の時だった。

当時学校ではベイ・シティ・ローラーズが流行っていた。
クラスメイトのお姉さんが持っていた3枚のアルバムを録音してもらって、自分のラジカセで何度も聴いて歌っていた。そのうち自分でもあの大きなジャケットに収納された丸いレコード盤が欲しくなって母におねだりした。
とはいえ、当時我が家の音響機器はナショナルのラジカセだけで、レコードプレーヤーはなかったのだ。

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父はあまり音楽に興味がない人だったが、翌日東芝のモジュラーステレオを買ってきてくれた。肝心のレコードは、母と一緒に当時釧路で一番大きな百貨店だった丸三鶴屋のレコード売り場に買いに行った。
そこで買ってもらった「ニュー・ベスト」というベスト盤の最終曲として収録されたバイ・バイ・ベイビーのオリジナルがフォーシーズンズだったのだ。

その後、例の「君の瞳に恋してる」を何度もラジオで聴いて、フランキー・ヴァリの名前も聞き知ってはいたが、その人がフォーシーズンズのリード・ヴォーカルだとはずいぶん後になってから知った。

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そのフォーシーズンズの伝記的ミュージカルをあのクリント・イーストウッドが映画化すると聞いては黙ってはいられない、と言うわりには結局劇場には行かずDVDでの鑑賞となった。

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しかしまあ、クリストファー・ウォーケンが出てくるだけで、画面の中の人間関係に奥行きが出てくるのはどういう仕掛けなんだろう。映画によってさして演技を変えているようには見えない。
彼自身の人柄のなせる技なのでしょう。いつもどんな役をやっても彼自身はクリストファー・ウォーケンにしか見えないのだから。
「ディア・ハンター」以外では、「ヘアスプレー」や「25年目の弦楽四重奏」といずれも音楽系の映画でお逢いすることになったので、何か音楽とのご縁があるのかなと思って調べたらもともとミュージカル俳優だったのですね。

BCRがカバーしたバイ・バイ・ベイビーと君の瞳に恋してるしか知らなかったが、ボブ・ゴーディオという才能あふれる作曲家の音楽をこれまで聞き逃していたことが残念になるくらい、映画は素晴らしかった。
ある意味優等生(ベビーフェイス)的な音楽だが、映画で描かれた彼らの人生は順風満帆とは対極の壮絶さだった。
マフィアとの繋がり。多額の借金。不法侵入。窃盗。逮捕、収監。
クリント・イーストウッド作品に共通して流れる、善悪の二分法を拒絶する雰囲気が彼らの音楽そのものにもあるのだ。

許されざる者、グラン・トリノ、ミスティック・リヴァー、トゥルー・クライム。
善悪という相対の中に揺れる自我と、それを錨のように繋ぎ止める「家」という存在が、イーストウッドの映画にはいつも描かれている。
その意味で、このジャージー・ボーイズという作品を、これほど「正しく」映画化できる監督も、クリント・イーストウッドしかいなかっただろうと思うのだ。


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