ミュージックマガジン (2014-02-14)
間違いなく、一番音楽を聴いて、一番純粋に感動した時期だと思う。
だからページをめくるたびに音楽が聴こえてくる。
以前、故大瀧詠一が、無人島に1枚だけレコードを持って行くなら何にするかという雑誌のアンケートで、「レコードリサーチ」というカタログの1962~66年を持って行けば、全曲思い出せるから、ヒットチャートを頭の中で鳴らしながら一生暮らすことができる、とお答えになったと聞いた。
とうていそこまではいかないが、いくつかのアルバムのジャケットを見た時、本当に断片的にメロディが聴こえてきた。
特にはっきり聴こえてきたのがREBECCAのPOISONとBOØWYのPSYCOPATHの二枚だった。
どちらもレンタルしたレコードをカセットテープに録音して何度も聴いたお気に入りのアルバムだった。
「日本ロック&ポップスアルバム名鑑1979~1989」のレコード評では、BOØWYのアルバムではなんといっても「JUST A HERO」が頂点で、バンドサウンド回帰の次作BEAT EMOTIONが、欧州ポップの前作を超えられなかったところからBOØWYの終焉へのプロセスが始まったと書かれていた。
おいおい、ちょい待てや。最高傑作は「PSYCOPATH」やろ。
と、思ったら矢も盾も、でTSUTAYAにGO!なのであった。
TSUTAYAでは、BOØWYがJ-POP、REBECCAが昭和歌謡にカテゴライズされていた。なんとなくわかるような気もするが、正しくもないような気がする。
で、借りてきた「JUST A HERO」と「PSYCOPATH」を改めて聴き比べる。
JUST A HERO
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PSYCHOPATH
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レコードからカセットテープに録音することで、実にいろんなものが失われていたのだと再発見した。
特に「歌」は、声が消えていく場所にいろんなニュアンスを込めることが多いが、テープの音の記憶では、このあたりの印象が平板で希薄だった。
こんなに豊かなニュアンスを込めて歌っていたのか。
音が伸びている時のヴィブラートが表側の個性だとすると、減衰時にしゃくりあげたり、パッとカットオフしたりするテクニックは、楽曲そのものの勢いのようなものを左右する。
そこに注目して聴くと、「JUST A HERO」での氷室京介の歌には、確かにここが全盛であるというサインがある。
英語も日本語も取り混ぜてすべて氷室的発声で語りきったその「歌」は、日本語ロック歌謡のひとつの到達点であることは誰にも疑えまい。
「PSYCOPATH」は、といえば収録された楽曲の素晴らしさは、やはり群を抜いていると思うし、何よりギターが素晴らしい。
一聴布袋氏の音とわかる図太いトーンはここで確立されている。
またギターの印象的なリフが類型的でなく、もはやどこを取っても伴奏とは呼べないほどだ。
逆に言えば、この演奏に歌を載せるのは難事業で、さしもの氷室氏も少し乗り切れていない印象がある。
当時の僕にはそこが聴こえていなかった。
それでもやはり、聴き終えた後にどっしりとした印象を残すのは「PSYCOPATH」であるという感想は変わらない。
音楽とはそういうものなのだろう。
音楽とは純粋に客観的な評価ができるような芸術ではなく、その音楽とともに過ごした時代の空気から逃れることは出来ないのだ。
だって、音は空気の振動から出来ていて、それが僕らの体に染みつくことで心まで震わせるんだから。
頭で覚えたんじゃなくて、体に染みついたものはそう簡単には忘れられないよ、ね。
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