各上下巻が3セットの大ボリュームで、時に凄惨で、時に陰鬱な表現もあったが、どうしても続きが知りたくて、なによりリスベットから目が離せなくて、本が置けない幸せな読書の時間を半年分ほどくれた。
確か2ヶ月おきに1~3と刊行されていったはずだが、その2ヶ月の間が辛かったことを憶えている。
そのスケールの大きな物語は、ミステリ小説としてもサスペンス小説としても一級で、登場人物たちの魅力とあいまって、ぜひ続きが読みたいところだが、出版前にすでに筆者スティーグ・ラーソンは亡くなっていて望むべくもない。
そんな残念な気持ちでいたところ、遺品のPCにミレニアム4の草稿が残されていたというニュースが飛び込んできた。
しかし実質上の共作者である内縁の妻と遺族の間で権利に関する訴訟が起き、事態は進んでいかなかった。
結局その草稿は原稿にならず、別の作者によって続きが書かれ、『ミレニアム4〜蜘蛛の巣を払う女』が2015年刊行された。
今年文庫化され、ようやく読むことができた。
なんにせよ、僕らはリスベットと再会することが出来たのだ。
それをまずは喜ぼう。
実際、読み始めてみると面白かった。
が、やはり筆者が違えば表現は変わってくる。
読み進めていくうち徐々に違和感が募ってきた。
リスベットはそんなに生ぬるくないよ。
ミカエルは、そういうときヒーローのようには振る舞わなかったよ、というように。
それに、読んでいて人間のダークサイドに気分が悪くなるようなラーソンの筆致はここにはない。
やはり世界であれだけの部数を売ったラーソン小説のコアは、描いた犯罪や人と人の争いの<醜悪さ>であったのだし、そこに生まれるべき<罪の意識>を以って、ラーソンは人間を描いたのだ。
仕方がないことだとは思うが、この「4」はミレニアム1~3の純粋な続編として書かれていて、筆者が変わったことは特に考慮せず、前作の解説的な表現を挟んでいないから、余計にそのような違和感を感じるのだろう。
だからこの本をミレニアムの同人小説として読むべきではないのかも知れない。
残された遺稿を破棄して、せっかく新しく書き起こされたのだから、我々もこれを新しい物語として受容しよう。
ラーゲルクランツが書き継いたこの小説は、サスペンス小説としては充分に面白いし、リスベットのその後だってやはり気になる。
すぐに「5」が出るようだし、「6」の刊行もアナウンスされている。
読後、ここからまた何年もミレニアムの世界が続いていくことを素直にとても嬉しいと感じた。
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