2017年4月19日水曜日

映画「陽だまりの彼女」:ビーチボーイズと上野樹里に恋するための最上の方法

サマータイムマシンブルースという映画を観て、SWING GIRLSまでまったく興味を持てなかった上野樹里が、たった一年でいきなり花開いた感じで、なにこれ可愛いじゃんと思ったので、何かもうひとつと思って借りてきたのが「陽だまりの彼女」でした。


そしたらこれはもうまさに、最上の上野樹里ファン・ムービー。






いいですなあ。
でも内容は、と言われたら正直ちょっと映画としてはキツいものがある。

伏線として置いたつもりのいくつかのエピソードが、伏線ではなくネタバレとして機能してしまっている。
このあたりが文学を、映像表現である映画に移し替えた時に起こるジレンマなわけだけど、まあ本作の場合には、肝心の原作がすごくよく出来ているのに、宣伝がネタバレを振り撒いて読書の楽しみをあらかじめ奪っていたという事情もあって、映画のせいだけとは言えないかな。

それにしても改変されたラストシーンも、原作小説のラストにあった深い余韻を著しく損なっていて、むしろ原作どおりのほうが映画的ではなかったかと思わせ、そこもまた残念なところ。


それでもこの映画には、上野樹里の可愛らしさを堪能する以外にも素敵な用途が残されている。
それはビーチ・ボーイズの、いや20世紀ポップミュージックにおける至高の一枚『PET SOUNDS』の冒頭を飾る佳曲『素敵じゃないか』を味わい尽くすガイドとしてだ。

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音楽的にみればサーフ・ミュージックのイメージが強い。
だから一聴、明るく能天気な歌に聴こえなくもない。

しかし、ブライアン・ウィルソンとトニー・アッシャーは、この曲に、夏の日の刹那を切り取るのではなく、人生を共に生きて、共に年老いていくことの素晴らしさを歌い込む歌詞を書いた。

老いやその先の死さえも予感させるその歌詞は、この明るいメロディと、天を浮遊するようなブリッジの不思議なコードで歌われるからこそ、当時ブライアンが抱えていた心の病への不安や、それでも人を愛さずにはいられない気持ちを強く訴えかけてくる。
そのあたりのアンビバレンツも、やはり英語を母国語としない僕らには感じにくいのだ。

たった二分半に凝縮された人生の讃歌を、この映画「陽だまりの彼女」は物語全体でオマージュしている。
映画はラストで、そのオマージュを全開にする。













もう、なんなら、この黒コマだけで泣けるわ。

【追記】このあと『虹の女神~Rainbow Song』を観てあまりに素晴らしくて、続編記事書いてます。

→『虹の女神~Rainbow Song』:ありのままの上野樹里、あるいはフィルムの匂いとエンドロール

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