今回のお目当てのひとつはデノンの11シリーズのリニューアルだった。
僕は2003年くらいにPMA-2000IVを聴いて、その粘りのある独特の中低音に魅せられて以来のデノンファンなのである。
デモの開始まで時間があったので同じ部屋で開催されていたヤマハのデモを見ていた。
銘器1000モニにそっくりな新製品が出たのは知っていたが音を聴いたのははじめてだった。
その名もNS-5000
来年夏の発売だそうだ。
綺麗な音。
このところピュア・オーディオに力を入れて立派な製品を市場に送り出しているヤマハの新しいアンプも、とても繊細で輪郭のはっきりした音だった。
しかし、昔のように一聴すぐヤマハとわかる「味」は消えていた。
僕個人の好みとは遠い「味」だったが、喪ってしまえば、現代ハイエンドの方向にみんなで向かっていく感じが少し寂しくもある。
それにしても全曲クラシックできたのは意外だった。
経験上ヤマハユーザーは、ポップスからロック寄りで、せめてジャズまで。
低音を出すのが難しい1000モニは、引き締まったビートを演出するのに向くが、空間的に広がる低音を必要とするクラシックには不向きだろうと思っていたからだ。
新しいヤマハハイファイモデルはクラシック方面を視野に入れているということなのだろうか。
さてお待ちかねのデノンのデモだ。
まずは筐体を眺める。
デザインは冴えないと評されることが多いが僕は好きだ。
筐体が鳴かないように、アルミ削り出しで作ればそれでいいが、値段の半分が筐体代ということになる。
知恵で鳴かないようにしているのがデノンアンプ。
もしお店で見かけたら、人差し指でコツンと天板を叩いて見て欲しい。
音が吸収されているのが感じられるはずだ。
そのような実直さがこのデザインには象徴されている。
スピーカーは予想通りデンマークのダリとの組み合わせだった。
まだ発売前のシリーズを持ってきたということだったが、エイジングが十分でないのか鳴りが悪い。
音色はデノンらしい粘りは後退し、どちらかというとマランツ寄りの鮮明なサウンド。
以前は音がカタマリで出てくる感じだったのが、音数を増やして空間を表現するタイプに変わったようだ。
ここでも現代ハイエンドの方向にみんなで向かっていく傾向を感じ、そういえば昔から日本企業ってみんなで同じ方向に行くもんだったよな、と思い当たった。
しかしこれは逆じゃないだろうか。
せっかくデノンとマランツは同じD&Mホールディングスの傘下に入った兄弟企業になったのだから、そのシナジーを追求すべきだ。
二つの異なる音色傾向を持つサウンドシステムが、D&Mの目指すべきものだろう。
アメリカハイエンドにその出自を持つマランツと、日本の放送・録音業界にその出自を持つデノンでは自ずと方向性が違うはずで、そのわかりやすさで両極のユーザーを独占するのが最適な戦略ではないか。
そしてスピーカーの販売戦略も逆を行っているように思える。
もともと両社ともにスピーカーメーカーではない。
そしてライバル社だったわけだから、それぞれ別の欧州スピーカーメーカーと組んでブランドイメージの向上に務めてきたということだ。
しかし今は同じ傘下企業。
そしてマランツが持っているB&Wは、おそろしく万能で能力の高いスピーカーで、こう言っては失礼だがちょっとDALIとは格が違う。
ここはB&W共有の一手と思う。
まあ余計なお世話だ。
実のところ、B&Wと組み合わせて聴いてみたかっただけなのだから。
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