2013年3月1日金曜日

オーディオテクニカAT-150MLXカーリッジの導入

お店の方に新しいアンプを迎えて、三週間ほどが経った。


音のことは、いいと思う。
それ以上に、これでもう「何だよ、DENONかよ」という目で見られるのを心配しなくて済むと思うと、とても晴れやかな気分だ。
もし、それが被害妄想だったとしてもだ。


それで、すっきりしたついでに、もうひとつ気がかりだった件を解決しようという気になっている。
それはレコードプレイヤーに関することだ。

現在使っているプレーヤーはDENON DP-500M。
一般にエントリー機というカテゴリーに分類される機種だ。
なぜ、エントリー機を使うのか、についてはすでに書いた
が、最も大事なポイントについてもう一度言う。

これが「ダイレクト・ドライブ」機だからだ。

自分で所有して日常的に使用するターンテーブルに、僕はベルト・ドライブを使うことに大きな抵抗がある。

うん。これは気分の問題だ。

現代のハイエンド・レコードプレーヤーのほとんどがベルト・ドライブやそれに類する方式を採用しているところをみると、理想的な方法なのだろう。
実際にベルト・ドライブのプレーヤーの音も何度も聴いたが、充分楽しめた。
ただ、所有するとなると話は別なのだ。

アナログ再生は「信頼性」との勝負だ。

回転は正しいだろうか。
針は正常だろうか。
水平だろうか。

いつも自分が出している音が正しいかどうか、僕にとってのアナログ再生は常に疑いとの戦いだ。
その土台となる回転への不安要素は、すべてを揺るがせる。
僕はその不安感を自分の機材の中に置いておきたくないのである。

日本のオーディオ黄金時代、プレーヤーの多くはダイレクト・ドライブ機だった。
だから中古市場を見渡せば、名機とよばれるマシンが多数見つかる。
しかし、プレーヤー系に限っては、中古はいかん、と思っている。
ヒトが作った機構が変化する先は「劣化」しかない。

すでにテクニクスのSL-1200Mk-6が生産完了となった今、現実的な価格帯で購入できるダイレクト・ドライブ機は、DENONのDP-1300mk-IIとDP-500Mしかない。
上級機との差は、キャビネットの仕上げによるハウリング・マージンとアームの高さ調整機構の有無。
僕は、それを補ってあまりある美点が500Mにあるので、そちらを選択している。
それは最低限のコンパクトな筐体と、素朴な仕上げの美しさだ。


見かけかよ、とお思いかもしれない。
しかし、僕にはあの1300Mk-IIのテカテカした塗装と、金色のアームだけはどうしても許容できないのだ。

で、このDENON DP-500Mというプレーヤー。お値段7万5750円なり。
安いなあ。
コンパクト&シンプル。
好みだなあ。

これによく出来たオーディオ・テクニカのOEM品であるカートリッジまで附属している。

このカートリッジは実によく出来たカートリッジで、一度銘機と言われるカートリッジをいくつかお借りして聴き比べたことがあるのだが、まったく引けをとらない、どころか元気の良さでは圧倒的に優秀。
常に安定してイキイキとした音像を提供してくれる。
ホント、安すぎるよなあ。

でもそこが問題。
音にはまったく問題を感じないけど、やっぱり数千円っていう感じのルックスで、ちょっと頼りない。
今、カートリッジの相場は、完全に二極化していて、世評が高いカートリッジは少なくとも7〜8万円台からで2〜30万円なんてのもザラにある。これじゃプレーヤーより高いじゃないか!
しかし幸いなことに、低価格帯の中にもオーディオテクニカやオルトフォン、そしてシュアーのMMカートリッジのラインナップには良い感じの価格帯で、なかなか立派なものがあるのだ。

それでも、以前のエントリーで書いたとおり、安価故に毎年交換針を替えることが出来る精神的安定が聴感にもたらすメリットを重視して、付属のカートリッジを愛用してきた。

この気持を変えたのが、先輩オーディオファイルがくださった、このカートリッジだ。

オルトフォンVMS20E
銘機の誉高いMMカートリッジだ。
さらに高価なオルトフォン540やDENON DL103といった時代を代表するカートリッジたちとともに貸してくださった中のひとつで、僕はとにかくこの音が気に入って、そう言うと、これはもう使わないから、使ってくれる人にあげるよ、と言って快く譲ってくださったのだった。

その頃僕はクラシックの、それもベートーヴェンの弦楽四重奏ばかり聴いていて、そんな時、このカートリッジは今まで聞こえてこなった弦の低い唸りのようなものを再現してくれて、ちょっとゾクッときちゃうような音楽体験をさせてくれた。

なるほど、やっぱりこういう微妙で、しかし決定的な違いがあったりするんだなあ、と思っていたのだが、先日マイルズ・デイヴィスのレコードを何枚か買って集中的に聴いていた時、なんだかマイルズの音楽を聴いている時にいつも感じる、高揚感が感じられていない自分に気がついた。

もしやと思い、付属のカートリッジに戻してみたら!
ああ、これだ。いつものマイルズの音楽がそこにあった。

やはり自分には、オーディオテクニカのカートリッジが合っているのかもしれない。
オーディオテクニカには、VM型というMM型と同等の出力を持つカートリッジが複数ラインナップされていて、現在その最高機種でも実売3万円を切っている。
これを試してみない手はないだろう。

で、さっそく取り寄せてみた。
AT-150MLXというVMカートリッジだ。


どうでしょう。
ゴールドのボディがかっこいいですよね。
シェルも新調したので、リード線もスムーズに接続できて、全体のルックスがぐっと洗練された感じがする。

そして、何よりも音だ。
このカートリッジの音はただの元気の良い音ではなく、中低域に張りがある充実した音とみた。
ふと思いついて、ジャーニーの後期の秀作「レイズド・オン・ザ・レディオ」をかけてみた。少し軽めのバスドラがトゥーン、と飛んでくる音の余韻が凄いぞ。

付属カートリッジに較べ、交換針が高価なのが、気にかかるが、メンテナンスに気を使ってなるべく長く愛用していきたいと思う。


で、アナログプレーヤーに関しては、もうひとつ懸案事項を残している。
稿を改めてお話したい。

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