東京創元社という出版社は、わりとけっこうな頻度で、せまーい需要を捕まえる復刊をやらかしてくれる。
一般的な出版社にくらべて値付けが高めでも読者の忠誠心が高いのは、それが理由だろう。
私も早川書房とこの会社には誠を誓っている。
私も早川書房とこの会社には誠を誓っている。
昨年末はエドモンド・ハミルトンの「スター・キング」を復刊しよった。
もちろん旧版も持っているし、翻訳者も同じ。すこーし訳文がリファインされている程度だが、鈴木康士氏の新イラストが素晴らしいし、堺三保氏の新しい解説がついているとあれば迷うべくもない。
そして今日朝から夕方までかけて一気に読んだ。
何度目か忘れたけど、やっぱり面白い。
バローズが1912年に発表した「火星のプリンセス」へのオマージュも感じられる1947年発刊の本作は、いまではライトノベルの世界に溢れかえる異世界ものの伝統を伝える一冊といえる。
そしてまた本作は、マーク・トウェインの「王子と乞食」を嚆矢とする「瓜二つ」テーマの古典、アンソニー・ホープの「ゼンダ城の虜」を下敷きにしているのだ。
荒唐無稽なスペースオペラの作者というイメージがハミルトンにはあるかもしれないが、彼は15歳で大学に飛び級で進学した天才である。
アメリカ文学の歴史に深い理解を持ち、大衆文学を愛した才人だったのだと僕は思う。
「ゼンダ城」には「ヘンツォ伯爵」という続編があり、本作もそれに倣って「スター・キングへの帰還」との二部構成となっている。
どうも私には二部構成にするために無理に書いたように思えてならないのは、リアンナとゴードンのメロメロのハッピーエンドを期待していたせいなんだろう。
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