2018年10月29日月曜日

村治佳織の新作『CINEMA』はグッとボリュームを上げて聴こう

みんな大好き村治佳織さんの新譜は、映画音楽特集。


ありがちな企画ではあるが、ネタに詰まってやったわけじゃない。
舌腫瘍での長期休業からの復帰作が、吉永小百合の強い希望で自らが企画・主演した映画『ふしぎな岬の物語』のサウンドトラックだったのである。
出世作でもある『カヴァティーナ』も『ディア・ハンター』のテーマ曲であったことを考え合わせると、自身の転機になる曲がいつも映画音楽であったことに特別な意味を感じているのだろう。

今回ギターは、愛器ロマニリョスでなく、1859年製のヴィンテージ・ギターを使用している。
そのせいか、いつもの響きと少し違う。
このギターの深い音色は、思い切ってグッと音量を上げた時にこそ胸に届く音だと思う。
デッカは、このアルバムにこそ、デヴィッド・ボウイが名盤『ジギー・スターダスト』の裏ジャケに掲げた"TO BE PLAYED AT MAXIMUM VOLUME"を書き込むべきだった。

そして錚々たるスタンダード・ナンバーに並んで、よくぞこれを収録してくれたと思うマーク・ノップラーの映画音楽初進出作『ローカル・ヒーロー』をフルボリュームで聴こう。


シネマ(初回限定盤)(DVD付)
村治佳織
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2018年10月21日日曜日

Mr.Children『重力と呼吸』:苛立ちのチケットボード

Mr.Childrenのニューアルバム『重力と呼吸』が届いたので聴いている。


安定のミスチル節だが、前作『リフレクション』に比べると少し小ぶりな、でも親しみやすい音楽を指向しているようだ。
ちなみに早期購入特典のステッカーは価格差ほどの価値はないように思う(個人的な感想です)ので、下記リンクには通常版をリンクしておきました。

このニューアルバム発売のニュースは、全国ツアーのお知らせメールで知った。
実はしばらく彼らのアルバムを買っていなかったのだが、前作の『リフレクション』はライブに参戦できたので、久しぶりに買い、今回もチケットが入手できたのでアルバムを購入した。

95年の東京ドーム以来、申し込んでも申し込んでも彼らのライブチケットは入手できなかったが、前回の全国ドームツアーは東京の友人が家族分の席を取ってくれて久しぶりの生ミスチルを楽しむことができた。
とても素晴らしい演奏だったので、今回もダメだろうとは思ったが、申し込むだけ申し込んでおこうとメールからリンクを開くと、なにやらチケットボードというサイトから申し込む仕組みになったという。

まあそういう時代だよね、ということで会員登録を始めたが、なんて幼稚なユーザー・インターフェイス!
デザインも古臭いし、今どき全角系・半角系を認識しないサイトなんて・・
同行者にはチケット分配をする方式で、複数枚の購入はできないシステムなのに、枚数を入力するフェーズがあったりして、イライラを募らせながらも会員登録を完了。
しかし、購入したいチケットがどうしても候補に現れず、もう忍耐の限界に達して、そのまま退会してしまった。

食事の時に、家内にそう言うと、ホントにあんたは短気なんだから、と言いながら自分でも会員登録を始め、何事もなかったように、チケットを探し当て、しかも抽選に当たりやがった!!
どうしてそうなったのか今でもよくわからないが、まあともかくライブには行けることになったのだった。
めでたしめでたし。

しかし思うに、まだデジタル系の技術は「再現性のないエラー」すら完全には排除できていない。
印刷できたり出来なかったりするうちのウィンドウズに僕はだいたいいつも苛立っている。
調べてみると、チケットボードのエラーで入場できなかった人の話なんかがけっこう出てくる。
こんなに簡単に、商取引が不調になるリスクを、手軽さなんかと引き換えにしていいものなんだろうか。

最近どんどんキャッシュレスになっていく世の中にも、だからちょっと懐疑的だ。
貨幣経済は、「国家の信頼」という、抽象ではあるがそれが無くては生活も成立しない必然を前提に置いて運用されている。
失敗する動物である人間の運用が前提になっているからこそ進化し続けたフェイルセーフが、そして何より、我々は失敗するものだ、という認識そのものが、その安全を担保している。
いろんなものをスマートフォンに集約していく流れに抗うことは、もう出来ないのかもしれないからこそ、僕はこの苛立ちを忘れないでおこうと思うのだ。


重力と呼吸
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2018年10月20日土曜日

ポジティヴ・フォース・フィーチャリング・デニス・ヴァリン:全AORファン必聴のレア復刻です

価値観なんてもとから多様なものだったんだろうけど、昔はもう少しその時代らしさのようなものが、音楽にも文学にも映画にもあったような気がしてる。
70年代と80年代のロックなら、音を聴けばはっきり違うってわかるでしょう。
音楽の話でいえば90年代以降は、それまでのトレンドを繰り返したりクロスオーバーしながら、多極化していったような気がする。
それでも多分後から振り返って、今年の音楽シーンには80年代回帰のムードが一部に確かにあったと総括されるんじゃないだろうか。

ブルーノ・マーズやDA PUMPのヒットなんかがその例だけど、この間久しぶりにタワーレコードをひやかしてたら、こんなアルバムを見つけて、直感で即買いしちゃった。


POSITIVE FORCEというバンドのセルフタイトル・アルバム。
オリジナルのLPは83年の発売で、 たった一枚自主制作で作られた盤というから、けっこうなレア盤だ。

これが聴いてみるとすごくいい!!
エレピのかっちょいいシンコペーションが、マイケル・マクドナルド期のドゥービーとかスティーリー・ダンあたりの音を思わせるし、ブラスが入ってくると、あの頃よく聴いたフュージョンのサウンドを思い出してちょっと懐かしい気分になる。

とにかくどの曲も楽曲の出来が良く、正直フューチャリングされている女性ヴォーカルが最初頼りなく感じられたりもしたが、逆に各楽器の細部の音がバランスよく聴こえて、聴き進めていくとこれはこれでいいな、と思えるようになって、途中から男性ボーカルも入ってきて、こうなると俄然サウンドもマッシブになってきて、まるでどんどん調子が出てくるライブを聴いているような気持ちになった。
最後はもう思わず拍手したくなるような見事な構成。

AORファンには必聴のレア復刻ですよ、これは。
手に入るうちに買っておくしかないと思う。


ポジティヴ・フォース・フィーチャリング・デニス・ヴァリン
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