2016年8月29日月曜日

水谷豊&原田美枝子が演じた中上健次の衝動の青春~映画『青春の殺人者』はマジ必見だわ

エラリー・クイーンが原作で、長く暮らした釧路も舞台に使われているということで観た「配達されない三通の手紙」という映画で、若いころの竹下景子さんの可愛らしさにヤラれていたら、それなら「ブルー・クリスマス」のほうがスゴいぜ、と言われて観てみたら、こちらの竹下景子さんがマジ天使。
この頃の日本映画の独特の台詞廻しや、どこか懐かしく温かい風景、とてもよくできたデザインの古い国産車などに、どんどん惹かれていった。

で、古い日本映画を探していたらこんなの見つけた。
『青春の殺人者』


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水谷豊と原田美枝子さんの主演である。


原作は中上健次の短編『邪淫』で、実際に千葉であった殺人事件を描いたものだ。

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映画は実際に事件が起きた現場で撮影されている。
芥川賞受賞作『岬』でも、その続編である代表作『枯木灘』でも、血族の葛藤と突発的な衝動による殺人を、自らの経験をもとに描いている作者にとって、捨て置けない素材だったのだろう。


舞台はまだ住民との闘争が続いていた成田空港近く。
ここに父親の支援でスナックを開いた男と、そこで働く幼なじみの女という設定。
とはいえ、裕福な家の息子というわけではなく、アイスクリーム売りから身を立てて、トラックのタイヤ交換を生業としてなんとか暮らしていけるようになった一家の、なけなしの貯金を息子の将来に賭けての起業である。

その息子は高校時代に自主制作の映画『磔刑』を撮っていて、親や学校の支配から自由を勝ち取る闘いを描いたものだ。当時、全国の高校でこのような闘争があったと聞く。



 親は、当時大学で起きていた学生紛争を見て、我が子が大学に進学するのを阻止したという負い目もあった。


このような時代性も語られてはいるのだが、破綻も悲劇もほんのちょっとした衝動によって動き出してしまう。
そこにこの物語のリアリティがあると思う。
知ったフリの解釈を拒むところがこの映画にはあって、それがこの映画を輝かせている。
いい映画だ。本当に。


大事なことを最後に書く。
音楽が素晴らしすぎる。
冒頭、タイトルバックの後ろに流れてきた英語の歌が、ホントにカッコよくて、なんじゃこれは!と映画を一時停止して調べ始めたくらいだが、わかってビックリ、ゴダイゴだった。
使われている楽曲はゴダイゴのアルバム『新創世紀』と、タケカワユキヒデの1stアルバム『走り去るロマン』にフル・ヴァージョンが収録されているそうで、ぜひ聴いてみたい。
その他のインスト曲もミッキー吉野さんが作曲しているそうだ。

ウィキペディアによれば、この『新創世紀』は、タケカワユキヒデの2ndとしてはじまったレコーディングが、バンド形態に発展していったものだそうで、てっきりミッキー吉野がタケカワユキヒデを誘って作ったバンドだと思っていたので、驚いた。

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