朝のレコード。
来生たかおの『オーディナリー』を聴く。
1983年リリースということは、81年の「夢の途中」82年の「シルエットロマンス」といった作家的に絶頂期の作品ということになるだろう。
しかし、この人の作風はいい意味でのマンネリズムで、ある種の「茫洋さ」とでもいったものがどの作品にも溢れていて安定感がある。
それでも来生たかおと聞いて僕が真っ先に思い出すのは井上陽水の「少年時代」で、作家としての知名度が高い来生たかおをピアニストとして起用している。
プロっぽくないピアノが欲しくて、というのは決して名誉な起用理由ではないだろうが、ポール・マッカートニーのような、という前置きがついていれば話が違ってくる。
シンガー・ソングライターのピアノ、くらいの意味だろうか。
ジャケットにも自身がピアノを弾いている様子が描かれているし、ライナーにもライブでピアノやギターを弾いている写真が多数掲載されていて、楽器演奏にも思い入れがあるように見えるが、各楽曲のクレジットには来生本人の名前はない。
商材としての自身の楽曲への矜恃と、来生本人の楽器演奏の捉え方が、井上陽水が彼に求めたものと対をなしていて、なんというか実にやはり音楽というものは 人間的なものだなあと思うのだ。
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