2014年8月29日金曜日

秋は弦楽四重奏で!

秋の声が聴こえてくると、弦楽四重奏曲が聴きたくなる。
世に数ある弦楽四重奏曲の中でも、ベートーヴェンの14番がとりわけ好きだ。

この曲を最初に聴いたのは、バーンスタイン指揮のオーケストラ編曲版だった。
冒頭の主題から、なんて悲しいメロディなんだろうと惹きつけられた。40分弱で7楽章もある楽曲の中で、次々と提示される短いが明確でそれぞれに異なる表情を持つ主題に魅了された。

Amnesty International Concert
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その後、人からハンガリアン・カルテットのレコードをいただいて、それを愛聴してきた。
やはり弦楽四重奏曲なのだからオーケストラ編曲版よりもカルテットの演奏がいい。
それぞれに魅力的な主題が、よりはっきりした輪郭で楽曲の喜怒哀楽を伝えてくれる。
演奏も定評のあるもので、最終楽章での「いつのまにか」聴いている自分が激しい熱情の中に身を置いていることを発見させられるあの感覚は、まさに14番の真髄を見事に再現した名演と言えるだろう。

Beethoven/String Quartet
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Hungarian Quartet
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今年も、朝晩涼しい風が吹くようになり、ふと14番をターンテーブルに載せたいという気分になったが、気まぐれに違う弦楽四重奏団の演奏を聴いてみたくなった。
楽曲が決まっていて、演奏違いを聴きたいというのが、音盤の選択では一番難しい。
このような有名曲は古今数多くの名録音があるものだし、評論の言葉は、時に音楽出版社の意向を強く受けているもので、必ずしも自分の気持ちと一致しないからだ。

僕は悩んだときは、なるべく「新しい」録音を聴くことにしている。
一般的に古い演奏には感情過多なものが多く、音楽の「構造」がマスキングされてしまっているものが多いと感じるからだ。
例えば僕が苦手な演奏家にチェロのジャクリーヌ・デュ・プレという人がいる。
ダニエル・バレンボイムの奥方である。そのバレンボイムと一緒に録ったシューマンのチェロ協奏曲があるが、名曲の多いチェロ協奏曲の中でも屈指の傑作といわれるこの曲を、なぜあのようにおどろおどろしく弾いてしまうのか。
まるで何かの続きのように始まっていつの間にか終わる、というのがシューマンの楽曲の真骨頂であるが、これでは台無しなのである。

シューマン:チェロ協奏曲
デュ・プレ(ジャクリーヌ)
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新しい録音といってもかなりの数のCDが毎年リリースされている。その中に「ハルモニア・ムンディ」というレーベルのものがあれば、僕は迷わずそれを買う。
ハルモニア・ムンディレーベルのクラシックCDには音の手触りに特徴があって、音像はふくよかで豊かな響きを持った少しフォーカスの甘い音。しかしその音像が非常に透明感の高い静かな空間に浮かんでいるような不思議な浮遊感のある音を持っている。

最初に買ったのがジャン・ギアン・ケラスが弾いたバッハの無伴奏チェロだった。
パブロ・カザルスの決定的な名演は確かに素晴らしかったが、いかんせん録音が古く目の前でチェロを弾いているような実在感には乏しい。まだクラシックCDをほとんど持っていなかった僕は、せっかくだからSACDを買おうと思って唯一タワーレコードにあったケラスのSACDを選んだのだった。

Cello Suites
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家に帰って聴いてみて驚いた。実在感をはるかに超えて、そこにあったのは夢の中で聴く音楽の音色だった。どこまでも美しく、それを弾いている人の姿さえも意識させない音だった。

近年有名になったのは、イザベル・ファウストが弾いたこれもバッハの無伴奏ヴァイオリン。
ケラスの録音と同じような空気感を持つCDだ。
これもオイストラフの演奏に違和感を感じ、ECMレーベルから出ているギドン・クレーメルの演奏に強く共感したあと、そういえばハルモニア・ムンディにもあるかな、と思い調べあたり、購入したものだ。

J.S. バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ集 (J.S.Bach: Sonatas & Partitas BWV 1004-1006 / Isabelle Faust (Vn))
イザベル・ファウスト
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J.S.バッハ: 無伴奏ソナタ&パルティータ集 VOL.2 (J.S.Bach : Sonatas & Partitas BWV 1001-1003 / Isabelle Faust) [輸入盤]
イザベル・ファウスト
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というわけで、極めて自然ななりゆきとしてベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲に関してもハルモニア・ムンディのカタログから選んだ。
東京弦楽四重奏団、という名前だが、ジュリアードで結成されニューヨークで活動していた。最初は日本人4名だったが、本作の録音時には第一バイオリンとチェロは外国人である。
2013年に活動停止とある。


音は、安定のハルモニア・ムンディ・クオリティで、安心して音楽に身を委ねる。
14番の演奏はあくまでもスムースで、まるで弦楽器の音がでる一台の大きなピアノで弾かれているような繋がりの良さで、ベートーヴェンの意図した短い多くの主題を構築的に組み上げるタペストリが目の前に出現するのを感じた。
ハンガリアン・カルテットともっとも異なるのは最終楽章の表現で、ハンガリアンは「熱狂」の賛歌として、東京は「寂寞」の叙情としてこれを歌い上げているように感じた。
今の今まで、聴きなれた名曲を綺麗な音で聴いているつもりでいたのに、いつの間にか違うところに連れていかれていたとは!

東京の14番が終曲したとき、まるでよくできたミステリを読んだ時のように、もう一度最初から、と強く思った。やっぱり14番は特別な楽曲なんだと思う。

ここでつい、ハルモニア・ムンディの他の楽曲を発注してみたくなるが、それは音楽の消費、というものだ。本当に良い音楽との出会いは端無く求める気持ちからは生まれないと思う。今は、この後期弦楽四重奏曲集に収められた6曲を味わい尽くすのみ。

2014年8月25日月曜日

映画「黄金のメロディ~マッスル・ショールズ」を観てきました!

映画「黄金のメロディ~マッスル・ショールズ」を観てきました!
よかったあ~。


もうね、アメリカ、アラバマ州の田舎町マッスル・ショールズの風景が凄い、というか凄まじいのですよ。
日本の「里山」っていわれる風景ってのは、どこか長閑で、美しくて、コントロールの利いている安心感があるでしょう。
マッスル・ショールズのそれは、ひたすらに広大で、荒々しくて、何か霊的なオーラを纏っているのです。
その端っこをなんとか開墾して、それでもでっかい機械使わないと仕事が回らないくらい大きな農園を作るんですけど、それでも自然に<傷をつけた>って感じにならないくらい、自然のほうが雄大で、結局包み込まれたまま。
いろいろとコントロールの利かないサイズだから、無理が生じて悲劇が起きたりする。
農民たちの生活はとても厳しいものです。

そういう厳しさの中から出てきた人たちの音楽は、だからこそ嘘がない。
マッスル・ショールズの音楽の切実さってのはきっとそこにある。

フェイムスタジオの創設者リック・ホールも貧しい農家で育ち、事故で幼い弟を亡くし、その時の経緯から母親が出奔。音楽の世界でなんとか軌道に乗り始めて、自分のために働いて食事を作ってくれた父親を楽にしてやりたくて買ってあげたトラクターが事故を起こし、父も亡くす。
自身も自動車事故で妻を亡くす。

でも彼は仕事には恵まれたと思う。
パーシー・スレッジやウィルソン・ピケット、エタ・ジェイムズなどの伝説的なシンガーのレコードを作った。
アレンジャーが作った譜面をバンドに弾かせて録音するだけのスタジオではなく、その場でみんなで良いアレンジを作っていくスタイルを、機材を知り尽くしたリック・ホールがサポートしていく。
一人ひとりは無名のミュージシャンだが、アラバマが鍛えたあきらめないハートが妥協無く音楽を作っていく。
リック・ホールが作ったのはそういうスタジオだった。

なんだか、高度に分業化されたはいいが、木を見て森を見ずになってしまい、結局プロフェッショナルがいなくなってしまった現代への大いなる皮肉とも、警鐘ともとれる。
自分の手の届く範囲を知り、その範囲のことはすべて知り尽くす。
そうできない者は、あの厳しいアラバマでは生きていけないのだろう。

知識としては知ってるつもりだったけど、その風景見ないことにはやっぱりロック・ミュージックってのは本当にはわからないのかもしれないな。
うん。いつか感じに行く。
待っててくれ、アラバマ!

2014年8月20日水曜日

井上夢人「ラバー・ソウル」:騙された記憶を上書きしたくない

文庫化された井上夢人さんの「ラバー・ソウル」を書店で見かけて、手に取った。

井上夢人さんは、以前徳山諄一さんとのコンビで岡嶋二人を名乗っておられた。日本版エラリー・クイーンというところか。
ずっと以前にコンビ最終作の「クラインの壺」を読んで面白かった記憶があったが、なぜかコンビ解消後単独名義で出した作品には食指が動かなかった。

今回この本を手に取ったのは、その装丁に、筆者のものか編集さんのものかはわからないが、並々ならぬ情熱とこだわりとセンスを感じたからだった。

タイトルは、もちろんビートルズのアルバム・タイトルからつけられたもの。
で、目次からすでにアルバム風である。


 で目次をめくるとこうなる。





これが実はただの飾りではなくて、各章の扉の仕掛けに繋がっている。
これがその扉。

各章はアルバム「ラバー・ソウル」の収録曲のタイトルになっている。

それだけではなくて、この扉ページのトーンアーム、第4章ではこうなっている。





そう、少し進んでいるのである。
これがB面最後まで続いている。
愛情のこもっている本なんだな、と思って買った。

しかも読んでみてわかったが、この章立てを曲名にしているところに、ストーリーの「裏側」を示唆させているという、小説技巧的にも凝りに凝っている作品なのだ。
面白く無いはずがない。

実は単行本の発売時に書店で見かけて、その時は買わなかった。
何故かと言うと表紙絵にちょっと禍々しいものを感じたからだった。

ラバー・ソウル (講談社文庫)
井上 夢人
講談社 (2014-06-13)
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しかし読み終えた今、この表紙の印象までもが180度変わってしまった。

解説には二度読み間違いなしと書いてあるが、そういう性質の本ではない。
むしろ、騙された自分をそのままにしておきたいと思わせるほどの鮮やかな叙述トリックが際立っている、と僕は読んだ。
僕は、叙述トリックのミステリが何より嫌いな男である。
しかしこれはいい。
作品に「格調」というものがある。
人間を馬鹿にしていない。騙してやろう、という心が先に立っていない。
こんな叙述トリックの作品は初めてだ。





2014年8月19日火曜日

音楽は漫画で聴け!

最近友だちに教えてもらった「BLUE GIANT」という漫画を読んでみたのですが、これが実に面白いのですよ。

中学校を卒業する時、仲間に連れて行かれたジャズ喫茶で生演奏に遭遇し、その「熱さ」にやられた主人公が、お兄さんが36回ローンで買ってくれたセルマーのテナーサックスを毎日河原で吹いて、いつか世界一のジャズ・ミュージシャンになるぜっていうお話。

BLUE GIANT 1 (ビッグコミックススペシャル)
石塚 真一
小学館 (2013-11-29)

同級生のロックバンドのヤツが、ジャズなんて大人のオシャレ系の音楽なんかやりやがって、っていう偏見から、彼に恥をかかせてやろうと、文化祭の自分のステージの前座の場を与えるんですね。
そこで彼が吹くのがコルトレーンの「カウントダウン」という曲。

なるほどこれしかない、っていう選曲ですね。
彼は一人で吹くわけだし、カンペキなアウェーの中で、最初からサックスの凄さでグッと掴まなきゃいけない。
2分半の短い曲で、しかも前半2分間マシンガンのように一人で吹きまくって、最後の最後にドラマチックな大きなメロディーに決着するこの曲はこのシチュエーションに最適だと思います。

ジャイアント・ステップスというアルバムの三曲目に入ってます。
これは、コルトレーンがだんだんカリスマっぽくなっていく転換点のアルバムで、シーツ・オブ・サウンドの追求とジャズという音楽の美しい部分との融合がうまくバランスしている良作だと思います。
ご関心があればぜひ。

ジャイアント・ステップス(+8)(SHM-CD)
ジョン・コルトレーン
ワーナーミュージック・ジャパン (2009-05-27)
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その昔、ジャズを題材にした漫画ってのは珍しくて、 専門誌の企画以外では細野不二彦先生のブロウアップ!くらいしかなかったんじゃないかなあ。

Blow up! (小学館文庫)
Blow up! (小学館文庫)
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細野 不二彦
小学館
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それが、「坂道のアポロン」がアニメ化までされちゃうんですから、音楽漫画もメジャーになったもんです。


音楽漫画ってのが、昔から好きでした。
記憶にある一番古い音楽漫画は六田登先生の「その名もあがろう」ってやつ。





少年サンデーに連載されていたギャグ漫画で、歌を歌うとその衝撃で周囲のものを破壊してしまうというファンタジー設定がなんともはやなんだが、演奏シーンがとにかくかっちょいい。
もう現物が手元になく、お見せできなくて申し訳ありません。
主人公の「森あがろう(=もりあがろう、ね)」の使ってるギターがストラトキャスターなんだけど、その絵が本当にリアルにかっこいい。
素人同然の状態から、情熱と場数でいい演奏になっていく感じには、子供心にも音楽っていいなあ、と思わせて忘れられない作品です。

次に記憶にあるのが、やっぱTO-Yでしょう。




これもサンデーっすね。
こういう音楽漫画の扱い方のあたりがサンデー派とジャンプ派を分かつ部分だったかもしれませんな。
もろ吉川晃司の哀川陽司とか、サンプラザ中野くんをモデルにした桃ちゃんとか、現実の芸能界を意識した構成で、どちらかというと音楽漫画というよりは腐敗した芸能界を描いた漫画って感じだったかもしれない。
でもやっぱり最初期のアマチュア時代のGASPでのライブシーンにはぞくっとしましたね。

少年漫画系の音楽モノで忘れてはいけないのが、コータローまかりとおる!の、第6部。
コミックスでは36巻から41巻にあたります。(KCスペシャルでは19-22)
極端流道場に居候することになった超絶ギタリストのスティーブ・パイwが、コータローのリズムセンスに気付き、バンドを組むことに・・という無理矢理な設定なのですが、バトルともうまく絡んで、実に面白いのです。

音楽漫画は少女漫画にもいい作品がたくさんあって、槇村さとる先生の「ダイヤモンド・パラダイス」好きだったなあ。

ダイヤモンド・パラダイス (1) (集英社文庫―コミック版)
槇村 さとる
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女性ボーカルのバンドにふらりと身元不明の男が近づいてきて、最初ローディーとして働くが、風邪で高音が出なくなったボーカリストを助けて、信じられないくらい見事なハーモニーを披露して、バンドにもぐりこむ。
そのツインボーカルの魅力でバンドの人気が出てのし上がっていくが実は・・というお話。

楽器とかが精密に書かれているわけではないんだけど、バンド内の確執とか、あるあるーって感じでリアル。
練習風景とかで、作曲者がドラムにリズム教えるんだけど「うぱら、うぱら、たた、ちーちー」とか言いながら教えてて、でもそんなんじゃ伝わらないのね。
これホント、よくわかる。作曲者のひとりよがりなイメージってのは伝わらんのですよ。
それにもし伝わったとしても、それでいい曲になるとは限らない。
結局まかせちゃって、そうきたかー、とかやってるほうが結果的に絶対楽しいし、仕上がりもいい。

あと、少女漫画はだいたい、作家さんが書いたオリジナルの歌詞が出てきて、要するにポエムなんだけどけっこうこれが音の鳴らない漫画という表現に音楽の情景を載せるのに貢献してると思うんですよね。


予備校時代、寮に住んでたんだけど、この寮には、誰が始めたのか知りませんが素晴らしい習慣があって、みんな読み終わった漫画雑誌を捨てずに共用の洗面所の棚に置いておくんですよ。
だからこの頃、スピリッツとか、ヤンマガ、ヤンジャンあたりの雑誌は不自由なく読めました。
で、僕はAKIRAが読みたくてヤンマガを楽しみにしてたんです。
それで、同時期連載されていた岡田ユキオ先生の「THE 13thSTREET レディオクラブ」っていうパンクロック漫画に出会ってしまうわけです。


これもかっこよかったなあ。
バンド名がデストロイド・モア・ピストルズとか、おい、って感じなんですけど、ギタリストが有名バンド出身なんだけどそれを隠してるっていう設定で、そうそう、そこがしっかりしてるとバンドってそれだけである程度成立したりするよね、と経験上頷いてみたり。

で、この漫画は青年漫画系にはめずらしく、歌詞ぽえむ連発です。かっこいいです。
作者岡田ユキオさんのこの次の作品「リフレイン」っていうのもストレートなロック漫画じゃないんですが、主人公がギタリストで、彼の音楽的生活ってのを描いてかっこいい漫画でしたね。
現在はちょっと違う方向の漫画をかいていらっしゃるようです。
それとも同姓同名の別人かしら。


で、いよいよ「BECK」の登場となるわけです。
ハロルド作石やっぱ天才や。
単行本34巻にわたる大長編が、遊びのエピソードなく疾走していく。

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ニューヨーク・マフィアだって出てくるし、レッチリもどきのスーパーグループだって知り合いだ。
ヨシキによく似た男が日本ロック界を牛耳っているし、もちろん恋もある。

でもやっぱりこの物語で一番気になるのはコユキくんの「声」なんですよね。
歌い出しただけで、聴いている全員が釘付けになってしまうのは、いったいどんな声なんだろう。
俺も欲しいなあ、そんな声(真剣)。

この作品はアニメ化されて、つまり実際に音楽が付けられました。
楽曲はヒダカトオルのビート・クルセイダースを中心に充分な数が作られて、2枚のアルバムとなった。
どちらも素晴らしいロック・アルバムになっている。
一聴の価値のあるアルバムと思います。


で、「BECK」以降、ここまでマイナー、または難しいと言われていたこのジャンルは百花繚乱の様相を呈します。
「けいおん!」や「のだめカンタービレ」のヒットで、音楽漫画というジャンルは揺るがぬ主要ジャンルのひとつとなったといえるでしょう。
最近だと映画化も決まった「日々ロック」がBECKの正統的後継漫画と言えるかもしれません。

現在進行中のクラシック系では、なんといっても「四月は君の嘘」が最高。
取り扱うクラシック曲そのものに膨大なエピソードがどっさり乗っかっているわけで、それを引用してつくり上げるストーリーはいろんなところからこちらの涙腺を容赦なく攻撃してきます。
1ページごとに泣けてくる。
まいるなあ。



吹奏楽の漫画なんてのもあります。
少年ジャンプからNEXT誌に移ったばかりですが、ソウル・キャッチャーズという作品。
なぜか音がカタチになって見えるという特殊能力を持つ青年が、それゆえに音楽嫌いになっているわけですが、その能力で誰かを救えるという経験を経て、吹奏楽部の指揮者を目指すというお話。
なかなか面白いです。

SOUL CATCHER(S) 1 (ジャンプコミックス)
神海 英雄
集英社 (2013-09-04)

変わり種では、ウェブ漫画から人気に火がついて出版にこぎつけた木村リノ先生の「あじさいタウン」でしょうか。
→ウェブ版はこちらからご覧いただけます。



大学の音楽サークルでプロになる仲間を探す二人のバンドマン。しかし意外と才能のある奴は少なく絶望しますが、二人で路上ライブをやり、メンバーを募集します。そこで出会ったのが、ちっこくて可愛いが超絶テクの美少女ベーシスト。さっそく彼女をスカウトしてみると、どうしてもあるギタリストと一緒じゃないとバンドには入れないという。
スタジオに連れてきた彼はなんと宇宙人!宇宙的難解フレーズを手に入れてバンドは躍進する!みたいなお話。
超絶面白いです。
もう宇宙人のヌっさんの演奏シーンの奇怪さも、ベース弾くと豹変しちゃう実々子ちゃんの弾き姿も、それを戸惑いながらも包み込んでロックにしてくリツオと正も本当に最高です。
ところが、2012年に1巻が出て以来、待てど暮らせど2巻が出ないんだなー。
待ってますよ!木村先生。