2014年4月15日火曜日

Great 3のニューアルバム「愛の関係」が凄い:または佐野元春とGreat 3の深い関係について

もう日本人アーティストで継続的に新譜を買っているのは、佐野元春とGreat 3だけになってしまった。

そのGreat 3の新譜がやっと手に入った。
やはりそんなにたくさんはプレスされていないのだろう。入荷に時間がかかっていた。

愛の関係
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GREAT3
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届いた新譜「愛の関係」をCDプレーヤーにセットしてプレイボタンを押す。
例によってシカゴ音響派の流れを汲む不可思議な音が流れてきて、エフェクトのかかったヴォーカルが、これまたヘンテコな歌詞を歌う。
そして片寄明人の作るメロディだけがどこまでも美しくセンチメンタルだ。

そして音が太い。
太すぎる。
今やスタジオの録音環境はほぼデジタルに移行したが、このアルバムはアナログ・テープによって録られているのだそうだ。
道理で。

アナログ特有のコンプレッションの効いた図太い音がこのアルバムの活きの良さを生み出している。
またデジタルのように簡単に切り貼りできない録音が、バンド本来の一体感のあるグルーブを創りだしたのかもしれない。

録音環境のせいだけではない。
2012年の復活アルバム「GREAT 3」以降、彼らの音は強靭に生まれ変わっている。
これは主に、ベーシストの交代によるものだ。

GREAT3
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メロディアスなベースラインで楽曲に浮遊感を演出することが多かった、オリジナル・メンバーであるベーシスト高桑圭が脱退。
後任のjan(ヤンと読みます)という、メンバーの白根いわく「シド・ヴィシャスのような存在感」を持つ23歳のイケメン新ベーシストのベースラインが強烈なファンクネスを放っている。
中央がjan。確かに存在感がある。


このファンクネスに引きずられるように、長いことプロデュースも務め、第4のメンバーとも言える長田進のギター・カッティングが、かつてないほどラフで粘っこく、ザクザクと空間を切り裂いていくのだ。
これはもう単純にあきれるほどカッコいい。

そしてこの新ベーシストのjan、なんと佐藤奈々子の息子である。
Great 3のデビュー当時、佐藤奈々子が写真撮影を担当して、その撮影現場にまだ小さかったjanも居合わせていたという長い縁のある関係だそうだ。
佐藤奈々子といえば、デビュー前からの佐野元春の音楽的盟友であり、僕としてはこの不思議な縁を歓迎しない理由はない。
そういえば、サポートでギターを弾いている長田進も佐野元春のThe Heart Landの最後のギタリストだった。
で、Great 3を抜けた高桑圭は、今佐野元春のコヨーテバンドでベースを弾いてるんだな。
最近、コヨーテバンドに加わった長身でレフティのギタリスト藤田顕もGreat 3のサポートギタリストをやっていたと聞いた。
Moto's Childrenの長い系列が出来つつある。
日本のロックの良心を支える太い幹に育って欲しい。

Great 3の楽曲はどの歌詞も「意味深」である。
短い言葉を積み重ねて、むしろ欄外に意味を設けようとしているように感じる。
だから音楽そのものは、歌詞の「意味」に頼らない。
そして言葉が持つ響きの力を最大限に使う。

であれば、聴く側の我々も、それを<音楽>として楽しむのがいいと思う。
<歌>が主役でない歌。
それがGreat 3の音楽だと思う。
洋楽ファンにぜひ聴いてもらいたい、本当に良質な「ロック」である。

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