「日本のロック&ポップス・アルバム名鑑1979-1989」を読んで、過ぎ去りし若い日に夢中で聴いたレコードのことを思い出し、片岡義男さんと小西康陽さんの「僕らのヒットパレード」を読んで、ジャンルとか定評なんかにこだわって、愛すべきはレコードというメディアそのものなんだということを忘れかけていた自分の愚かしさを恥ずかしく思う今日この頃なのであった。
札幌はようやく雪も溶け、まだ風は肌寒いものの、この時期週末に晴れるのは久しぶりのことで、宿酔いでも無かったので思い立って中古レコード屋に出かけてみた。
きっかけがきっかけなので、なるべく日本の80年代近辺のレコードがあるところがいい。
と、なるともうここしかない。
白石の隣「南郷7丁目」の文教堂さん。
同名の大型チェーン店とは無関係の、町の古書店といった佇まいのお店である。
地下鉄東西線の「南郷7丁目」駅の3番出口を出ると、すぐ目の前に立地しており、交通至便。
在庫の中心は洋楽のロックで、次いで邦楽ロック、というところが特徴だと思う。
ジャズは少ないが、極めて「まとも」な品揃えで、マイルズやエヴァンスやコルトレーンに頼らず、何年かかけてひととおりジャズを聴いた人が次に買うべきレコードを揃えているようだった。
クラシックもあったが、量は少なく、こちらは初心者なので品揃えの良し悪しはまるで見当がつかない。
以前、特別な一枚と書いたDU PLEXのWITH MY HEARTの「二枚目」は、このお店がヤフオクに出品したものを落札したものだが、札幌のお店であることを知って直接取りに伺った。
その日は、あまり時間がなくて隅々まで見ることができなかったが、雑多で未整理なエサ箱(レコードを陳列する箱をこのように呼んでいます)にはお宝が眠っていそうな雰囲気に溢れていた。
お目当ての安部恭弘は、名盤の誉高い「SLIT」こそ無かったが、昔よく聴いていた「TUNE BOX」を見つけた。素晴らしいアルバムだが、これはCD化されているのだろうか。
そして「日本のロック&ポップス・アルバム名鑑1979-1989」で布袋寅泰さんと大村憲司さんのギターバトルが収録されていると書かれていて、よく聴いていたのにそんなことにはまったく気が付いていなかった中島みゆきさんの「Miss M」も見つけた。
で、おどろくべきことにどちらも300円台で売っていた。
ジャケはどちらもシュリンクが残っていて美麗。帰って聴いてみたところ、盤質も極めて良好であった。
僕がエサ箱を漁っている最中にも、文化人然とした身なりの少壮の人がダンボールに詰めたレコードを持ち込んでいた。
エサ箱の下には、まだ陳列されていないレコードが山ほどあったし、良心的すぎる値付けに応えるためにも定期的に覗いてみる必要のある店と認識した次第だ。
ところで、Miss M購入のきっかけとなった、アルバム名鑑に寄稿された「ノスタルジアでの布袋寅泰と大村憲司のキレキレのギターバトル」という松山晋也氏の講評だが、ライナーによると、ノスタルジアは布袋寅泰と松原正樹による演奏となっており、ギターソロは無い。確かに左右のチャンネルで異なるリズムを奏でていて緊張感の高い好バッキングだが、バトルという趣ではない。むしろこのアルバムから感じるものは、バックがどうであろうと関係ない「中島みゆき」という音楽性の強固さである。
蛇足だが、念のため付記しておく。
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