場所は2008年に出来たという札幌市民ホールで、初めて入った。
なにしろ大通駅至近というロケーションが、こんな雪道にはありがたい。
当たり前だが、比較的観客の年齢層が高め。
ギターを自分でも弾く人が多いのだろう。ステージ上の機材をみんなで盛大に撮影していた。
入り口でカメラチェックもなかったので、今日は撮影オッケーなんだなと思っていたら、慌ててホールの人が飛んできて撮影禁止です、と叫んでいた。
その直後、館内放送でも撮影と飲食の禁止を伝えるアナウンスが流れた。
僕の隣でサンドイッチを食べていたカップルが慌てて食べかけのサンドイッチを袋にしまっていた。
ラリー・カールトンのアンプといえばダンブルだが、今日はダンブル系の音が出て、比較的入手しやすいブルードが置かれていた。
デヴィッドの方は、フェンダーの小さなアンプ。ブルース・デヴィルに似ていたな。
演奏はラリーのソロ・ギターから始まった。
なにかこう、全部の弦の音が出きっていないように感じる。
弱音がPAに乗ってこない感じで、全体に音量が低めにセットされているようだ。
3曲目から、ベース(ラリーの息子です)、ドラムスが入ってきて、トリオでの演奏になる。 ここでもドラムスの音がPAに乗っていない。
バンドをドライブしない。
まいったな、と思って聴いていると、いよいよデヴィッドの登場で、合わせてキーボードとサキソフォンも追加された。
デヴィッドの音はもともと繊細で、弱音のニュアンスが重要だ。
今日のPAには、おそらく乗ってこないだろうと思ったが、まったくその通りで、ちっとも聴こえてこない。
しかしデヴィッド御大、しきりに自分のギターに内蔵しているプリアンプを演奏しながら調整して、曲の最後にはあの美しすぎるグリッサンドがきちんと聴こえるようになってきた。
さすがだ。
PAさんも目が醒めたのか、この曲以降徐々に各楽器のボリュームが適正になり、やっと札幌市民ホールにグルーブが戻ってきた。
バランスが取れてみると、ラリーとデヴィッドのバッキングの異なりが際立ってくる。
ラリーカールトンは、ソロを弾いていなくても、バッキングについキャッチーなフレーズを盛り込んで、そこだけで聴かせてしまう。
主役の声しか出せない声優というのが世の中にはいるのだが、ラリーカールトンもギターもそれによく似ている。
デヴィッドのバッキングは、それだけで楽曲の背骨を担うことはできない。
しかし、あの複雑なトリルを絡めながら上昇、下降と自由自在のグリッサンドは、まさに彼のシグニチャー・サウンドで、大昔のソロ期にすでに完璧に完成されていた。
さらに、普通にコードを弾くようなところでも、素早い装飾音をキラキラと輝かせる。
公演の間中、僕はデヴィッドの魔法のように動く指に釘付けだった。
そういう意味で、相性が良く、まことに見応えのある共演だが、この二人の共演歴は古く、1975年、マリーナ・ショウの名盤中の名盤「Who is this bitch,aniyway」収録のFeel like makin' loveが最初だと思われる。 帰って聴き直してみると、ホント二人ともあの頃からプレイスタイルまったく変わってないことがわかる。
マリーナ・ショウ
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夕方公園を歩いていると恋人たちの「行為」が目に入る。そんな時、わたしはあなたとしたくなる。
それだけの歌だ。
こういう歌を自分で作って人前で歌う感覚は僕には理解できないが、二人のギターは本当に素晴らしい。
僕は、ラリーカールトン最大のヒット曲であるルーム335が、公演の最大のハイライトになるだろうと思っていたが、なぜかこの曲のみトリオに戻っての演奏となった。
複雑なコード・チェンジが身上のこの曲で、コード感を辛うじて息子くんのベースが作っているが、やはりあの独特の洗練は出てこない。
ちょっと残念な335ではあった。
その代わりってわけじゃないけど、ブルーズになると、もう年齢すらも若返ってしまった感じでノリノリで弾いていたなあ。
ギタリストというやつは俄然いきいきするものだが、この二人も例外ではなかったようだ。