2012年7月9日月曜日

CAVIN大阪屋、高級オーディオ試聴会体験記 Part-2

承前

さて、次が困った。お目当てのマジコQ3とソナス・ファベールAMATI FUTURAの時間帯が被っているのである。
一緒に行った先輩と相談して、15分で区切って両方聴こうと決めた。

まずはマジコQ3。
ドライブするアンプはパス・ラボのプリと、パス・ラボを主宰するネルソン・パスのプライベート・ブランドであるファースト・ワットのパワーアンプだ。

これは音が出た瞬間から先輩と微笑み合ってしまったぐらい文句のないいい音だった。
言葉で言うなら「安定」。

先輩はいみじくもスピーカーの重さが音に出てるって感じだな、と言っておられた。
言い得て妙。

ごく一般的なトールボーイサイズのこのスピーカーの重量は一台110kg。
一人ではとうてい持てない。
どんな信号を入れようとまったく揺るがない筐体なのだ。
聞き惚れているうちにあっという間に時間が。

後ろ髪を引かれながらも別室のソナス・ファベールのもとへ。
これまた、部屋に入ったとたんに魅了された。
いかにもこのスピーカーの得意そうなバイオリンの独奏。
しかしこれは自然な音ではない。
スピーカーによって上手に色付けされた魅惑的な音像。
綺麗な木目の筐体はおそらく入力された信号に沿って音楽的な振動で「鳴っている」はずだ。
意外なことだが、ジャズもかなりいい。そして最高だったのは次に鳴らされた手嶌葵だった。

曲はさきほどのものとは違い「アルフィー」。
こちらも名曲の名唱。
そして音像は完全に実物大だった。
まるでそこにいるのではないかというリアリティ。
このCDは自室で聴いていても息づかいが間近に聴こえて、ときどきぞくっとすることのある優良録音盤なのだが、ソナスの色まで加算されて届けられた歌声は、また格別な手触りだった。

ドライブしていたアンプはドイツのブルメスターのセパレートアンプであった。この見事な音に少なくない貢献をしているのだろうし、本当にカッコいいアンプで、こんなのを部屋に置けたらと思わなくもないが、とにかくデカイし、なにより非常識に高価なので、はなから考える必要もないのだが。


まったく動かない筐体で、あくまでも録音した音のすべてを伝えようとするマジコの音。そして、音楽的な箱鳴りを作り出して、録音メディアを再生することだって楽器を演奏するのと同じように音楽を作り出す行為なんだよ、と我々に教えてくれるソナス・ファベール。

マジコが450万円でソナスが380万円なわけで、もはや買うとしたらどちらなどという設問自体が意味を持たないが、もし答えようとしても今の自分には答えが出せないと思う。強いていうなら後傾していないマジコのデザインの方が好みではある。
だから、音で絞り込んでいって最後の最後迷ったら、もうデザインで選ぶという選択基準しか残っていないような気がする。まあ、そんな機会に恵まれる幸運が私にあれば、ということだが。

さらに続く

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