2019年1月4日金曜日

こんなに捻ったのに正統派な大傑作:『カササギ殺人事件』の構成の妙

ミステリー評論家の友人が新聞のコラムで勧めていたアンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』を読了した。

まあ帯に書いてある通りの内容なんだが、これがよく出来てる。
クリスティのオマージュに関して言えば、作中作において平凡な村人たちそれぞれが抱える「事情」が次々と明かされ、それがまた別段突飛な事情でもないのに充分殺意の根元になり得るもので、それゆえ事件の様相がどんどん複雑なものになっていく過程にその特質が現れている。だからこそこの作中作は情報革命以前の田舎社会を舞台とする必要があった。

さて凡庸な作家ならば、本編であるイギリス出版業界ミステリの部分では、現代を舞台にしているがゆえの情報入手のスピード感を対比的に使うだろうと思うが、本作では編集者という素人探偵を謎解き役に配して、意図的にそのスピードを上げないようにしている。
この構成の妙が現代に起きている事件を軽くせず、ミステリ作品としての重厚さを担保しているのだろう。

構成といえばラストに配置された・・
いやこれは実際に読んでいただいた方がいいだろう。
どのみちミステリファンならばこの作品を避けて通ることはできないはずだから。

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)
アンソニー・ホロヴィッツ
東京創元社
売り上げランキング: 175

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)
アンソニー・ホロヴィッツ
東京創元社
売り上げランキング: 216

0 件のコメント:

コメントを投稿