あまり話題にならないが、「トゥルー・クライム」という映画がわりと好きだ。
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昔仕事で大変お世話になった東京工科大学が協力したと聞いて観始めた「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの第二作を家族で観に行った時、エンドロールがはじまって、なかなかいい映画だったな、と思っていたら後ろに流れる歌(バンプ・オブ・チキンの「花の名」)が素晴らしすぎて、自分の中でのこの映画の評価が二段ほど上がってしまったことがあるが、「トゥルー・クライム」もそんな映画のひとつだった。
「トゥルー・クライム」のエンディングに配された歌は、ダイアナ・クラールとデヴィッド・フォスターによる「Why Should I Care ?」
デヴィッド・フォスター、ジャズもイケるのかと驚いた。
そのダイアナ・クラールとデヴィッド・フォスターが、今度はフォスターのホームグラウンドであるポップスのアルバムを作ったと聞いてかなり期待して聴いた。
Diana Krall
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タイトルは「Wallflower」
ボブ・ディランの曲から採られている。
これはディランが、パティ・スミスをイメージして書いたと言われている歌で、オリジナルはダグ・サームのレコーディングで、後に自分でも録音している。
ディランの録音は「Bootleg Series vol.2」に収録されている。
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Wallflower=壁の花とは、パーティなどで男の子からダンスの誘いがかからず壁際にいる女の子のことだ。
ダイアナ・クラールは今となっては美人ジャズシンガーの代表格だが、キャリア初期のアルバムに掲載された写真を見ると、もしかしたら少女時代、壁の花だった経験もあるのかもと思ったりした。
どうでもいいことだが。
さて肝心の音楽のほうだが、ポップスカバーのアルバムを好む性質の音楽ファンにこのアルバムでのダイアナ・クラールの歌唱は、もしかしたら地味に過ぎるかもしれない。
耳を刺す高音も、圧倒的なロングトーンも、思わず声が出るようなカッコいいメロディもない。
しかし例えば、ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」が好きでカラオケで歌ってはみたものの、思いの外英語の譜割りが難しくて挫折したことがあるような人には、このアルバムでの「アローン・アゲイン」をぜひ聴いてみて欲しいのだ。
ああ、こうなっていたのかと思うだろう。
今回のアルバムでは彼女の歌から「虚飾」が剥ぎ取られている。
アローン・アゲインからはギルバート・オサリバンらしさが、デスペラードからはドン・ヘンリーらしさが剥ぎ取られ、わかりやすい「聴きどころ」を作らないように細心の注意を払っているように感じる。
ネイキッドな歌の姿にアクセスできる。
そうしてはじめて、英語が母国語でない僕らは、それぞれの曲のオリジナルの響きの影響下から離れて、例えばなぜデスペラードでは、ダイヤのクイーンではなくハートのクイーンに賭けるべきだと言っているのか、アローン・アゲイン=ひとりに戻る、とはいったい何のことを言っているのかといった、楽曲の本来的なテーマに立ち戻ることができるのかもしれない。
別にそうしなくてはいけない、というわけではないが。
太田 利之
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