宿敵ウル・クォルンが、ヌララとともに刑務所を脱獄してきます。
今までカーティスが捕まえてきたおなじみの悪役さんたちも一緒に引き連れての脱獄劇は、今なら劇場版の企画にぴったりな総集編的シナリオになっています。
ハミルトンのスペースオペラにはよく荒唐無稽という形容詞がつきますが、カーティスの活躍の裏で、科学の魅力に取り憑かれ、どうしようもなく悲劇的な運命をたどってしまう科学者の物語も描かれているのです。
異次元の世界にあるという秘宝を求めて、次元の壁を超える宇宙船を開発し、そこで出会った悲運の星の人たちに心を寄せ、そこで暮らす老科学者。
そして、科学の力で太陽系の支配者たらんとするウル・クォルン。
どちらも科学に魅せられ、野心に駆られ、そして悲劇的な末路に誘い込まれていきます。
それまでできなかったことを可能にする科学の力は、隣人を幸せにもするが、力の非対称の魅力にはやはり抗いがたいものがある。
僕らはどのような知見を以って科学と共存していくべきなのか。
おそらく答えの出ないこの問いを、ハミルトンは大衆SFを書くことで発信しつづけていたのでしょう。
ラストで自ら死を選んだウル・クォルンですが、マンリー・ウェイド・ウェルマンが書いた最終巻「小惑星要塞を粉砕せよ!」と翻訳者野田昌宏さんの書かれた「風前の灯!冥王星ドーム都市」でも登場します。
やはりクォルンとヌララのカップルはシリーズ随一の人気悪役キャラなのですね。
ところで本作でもジョオン・ランドールのツンデレ指数はまた少し上がってきています。
野田総帥の名訳は文化遺産として残すべきとしても、近年のライトノベル作家による正調ツンデレによるジョオンも見てみたいものです。新訳か、新解釈のアニメ化などの企画はないものでしょうか。
いいと思うんだけどなあ。
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