中島美嘉さんの表紙に「最後に聴きたい歌。」のコピー。
これは買わねばなるまい。
CCCメディアハウス (2015-02-16)
特集の冒頭にある、ピーター・バラカン氏の「愛した歌の数だけ、人生は豊かになる。」という言葉にこの特集の真意が端的に表現されていると思う。
自分の人生の最後に聴きたい曲を考えるということは、いいことも悪いこともあったはずの人生の瞬間瞬間に想いを馳せていくことに他ならない。
ちなみにバラカン氏が選んだのはアニマルズの「朝日のない街」でした。いいですね。
誌面では、朝日のない街(We've Gotta Get Out Of This Place)の収録アルバムとして「アニマル・トラックス」が紹介されている。
ジ・アニマルズ
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実質アニマルズにはファーストの「アニマルズ」とこの「アニマル・トラックス」しかオリジナルアルバムはない。これは2013年にその二枚ともを愛情たっぷりにオリジナルLPの仕様ごと復元させた紙ジャケット盤で、今が絶好の購入のチャンスだと思う。
久保田利伸が選んだヒートウェイヴというバンドの「オールウェイズ・アンド・フォーエバー」という曲は聴いたことがなかった。
Heatwave
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マイケル・ジャクソンの「スリラー」を書いたロッド・テンパートンはこのバンドのキーボーディストで、オールウェイズ・アンド・フォーエバー」も彼のペンによるものと聞いたが、Youtubeで聴いてみたが、僕にはちょっとピンと来なかった。
今はまだその時期が来ていないのだろう。
音楽を理解する、ということにはそういう側面がある。
吉本隆明が、この作品の素晴らしさは僕にしかわからないはずだ、という強い感銘こそが芸術の本質なのだというようなことを言っていた。
そういうことなんだろう。
JUJUさんは、自身の芸名をもらったウェイン・ショーターの「JUJU」を挙げていた。
ウェイン・ショーター
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通常最後の曲なんて言うと、ノスタルジックにさせてくれる美メロのバラードっぽい曲を想うもんだけど、この曲にはそういうセンチメンタルなところは欠片もない。
たぶんルートのコードも使ってないんじゃないかと思うような浮遊感。一瞬も聴き手を安心させない厳しい楽器同士のせめぎ合いが支配する曲。
これが、JUJUさんの音楽というものに対する基本的な姿勢なんでしょう。
各氏の選曲とも、概ねその人生の豊かさの反映になっていて素晴らしいのでぜひご覧頂きたいのですが、印象深かったファッションデザイナーのポール・スミス氏のページについて一言だけ。
ポール・スミス氏は毎朝6:00(!)にオフィスに出社すると、仕事場に置いてある3000枚のレコードコレクションからその日の気分のアナログレコードを聴くんだそうだ。
かっこいいなあ。
しかも使っている装置が、僕が小学生の時憧れて憧れて毎日カタログを眺めていたテクニクスのマットブラックに塗られたシステム・コンポじゃないか!!!
欲しかったなあ、これ。うーん、やっぱりかっこいい。
きっとこの装置からは、彼の人生がそこに凝集したような音が鳴るんだ。
他人が聞いたらちっともいい音じゃないかもしれないし、本当にすごい音なのかもしれないけど、そんなことどーでもいいんですよ。
もう文字通り、純然と自分の名前で勝負して生きてきた彼の生き方がどーんと伝わってくる。
もちろん音楽関係の知り合いも多い、彼のこと。CDを聴かないってわけにはいかないだろうけど、CDは部屋の隅に山積みなんだそうです。村上春樹さんと一緒ですね。
もちろん特集を読みながら、では自分の「最後に聴く曲」って何だろうと考えた。
僕を音楽に目覚めさせたベイ・シティ・ローラーズだろうか。
それとも自分で歌を書くことに向かわせた甲斐バンド?
その甲斐さんのラジオに教えてもらって、自分の作曲スタイルを決定づけた佐野元春かもしれない。
などと考えている間中、心の奥のどこかから、最後に聴くための自分の歌はまだ作れていないのかい?という声がずっと聞こえていた。
逃げられないものだ。
過去に書いた曲たちのリメイクをはじめてもうずいぶん経つが、あまりに昔書いた言葉が今の自分にフィットしなくて放り出しかけていたのだが、やるしかないね。
晩年、病気で記憶が曖昧になったモーリス・ラヴェルは、自分の作った「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴いて、「この曲は素晴らしい。誰が書いたんだ。自分もこんな曲を書きたかった」と言ったという。
そこまでのものは望まないが、僕にとっての最後の曲が、やはり自分の書いた曲でないというのも寂しいとは思うから頑張ってみる。
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