小学4年生のとき、友だちの家で聴いたBay City Rollersにすっかりやられて、音楽が好きになった、と思っていたが、もしかしたらその時に好きになったのは「レコード」だったのかもしれない。
お小遣いで、最初に買ったレコードは沢田研二さんの『勝手にしやがれ』で2枚目は清水健太郎さんの『失恋レストラン』だったが、どちらもいつの間にか失くしてしまった。
ジュリーには『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』というジャストなベスト盤があり、音源も入手していた。
その後、いろいろあった清水健太郎さんの音源は手に取る機会がなかったが、『失恋レストラン』に続いて2曲目のヒットとなった『帰らない』もテレビやラジオでよく聴いて、冒頭の印象的なフレーズは長い間記憶に残っていた。
ふとそのことを思い出し、メルカリでこのアルバムを見つけた。
故ナンシー関さんが「無人島に持っていく一枚」に選んだという名盤だが、その名盤たる所以は、ひとえに収録曲の充実にあると思う。
文句なしの名曲『失恋レストラン』『帰らない』をはじめとするつのだひろ楽曲たちに加、清水健太郎さんご自身も作詞作曲を手がけている。
中でも『両切りのキャメル』は、彼のレパートリーの中では異色作といえるアーバン・ポップで、パブリック・イメージとは異なる、彼の広い音楽趣味を窺わせる名曲だ。
そして、ダウンタウンブギウギバンドの名曲『知らず知らずのうち』も泣ける。このカバーが、宇崎竜童作詞作曲による『遠慮するなよ』という3rdシングルに繋がっていくのだろう。
『失恋レストラン』を除く全曲で馬飼野康二さんの名アレンジが炸裂して、特にちょっとフェイズシフトのかかった歪み系ギターが縦横無尽に暴れる感じがとても素敵なんだが、演奏者のクレジット記載がなく、誰が弾いているのかわからない。
それだけがとても残念だ。