アナログレコードで山下達郎を聴きまくっていたら、友達が言っていたシアターライブのことを思い出した。札幌駅のシネコン「シネマフロンティア」のWEBを見るとまだやっているではないか。
思い切って出かけてみた。
もちろんライブ盤「JOY」も持ってるし、Ray Of Hopeも初回盤で買ってるから特典の「JOY1.5」も聴いている。しかし、この映画で観る山下達郎体験はまるきり別のものだった。
昔から言われていることだが山下達郎自身のカッティング・ギターが凄すぎる。
どちらかというと前のめりに走っていくカッティングがバンド全体を引っ張っていく。リズムセクションまでもがその上に乗っかってゆったりと音楽の重心を下に押し下げて揺るぎない安定感を作っている。
驚くべきはそのオンタイムのギターを弾いているご本人の歌が、もっとも後ろから伴奏を追いかけてたっぷりとした溜めのある歌唱になっているってとこだ。体の中に二つのタイム感を共存させられるのか。そんなこと人間に出来るのか。
ボーカルの冴えも恐ろしいほどだ。80年代の歌声と2012年の歌声がほとんど変わらない。まさに圧倒的な声の力。
最後に流れた曲は、夏の夕刻のフェスで歌われた「さよなら夏の日」だったが、会場の若い女性が声の力に心が押されてべしょべしょに泣いているのを観てこちらもちょっと涙ぐんでしまったし、若い男性の信じられないものを見たようなリスペクトの表情をうかべ目を見開いて身じろぎもせず歌に聴き入っている姿にこちらも感動してしまった。
Ray Of Hope発売時に菊池成孔が、はじめて山下達郎に「加齢」を感じたとコメントしていたが、この映像を見たら撤回せざるをえないだろう。
映画を観ている間中、終わるとつい拍手をしかけて、いかんいかんと我に返る連続であったが、他のお客さんも同様であったらしく、映画が終わった瞬間誰かが拍手をしてみんなも追いかけて大拍手で8番シアターを包んだ。
シアターライブ、いいもんですね。