昨夜『ちょっと今から仕事やめてくる』という映画を観た。
KADOKAWA / 角川書店 (2017-12-08)
売り上げランキング: 1,300
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衒いなく泣かせにくる映画は少し苦手だし、思ったほどコメディ要素もなかったが、 黒木華さんの名演とエンドロールのバヌアツの美しさは確かにこの映画の見どころだったように思う。
しかし、エンドロールの直前にタイトルが出る演出は最近の流行りなのか、本作でも採用されていて、ここには大いに違和感があったと表明せざるを得ない。
タイトル『ちょっと今から仕事やめてくる』は、主人公のセリフとしてこの物語のクライマックスに登場するが、それがラストではなく中盤の転換部に現れるところが美点だと思う。
そこまでの鬱屈がいったん晴らされて、その後の人生の意味を探していくラストシーンが続く。
それが綺麗なバヌアツの映像が流れるエンドロールとともに余韻となって、観ている自分の人生にも思いを馳せていくという、まさにイーストウッドの『グラン・トリノ』ばりの名演出となるはずだった。
ああそれなのに、すでに役割を終えたはずのタイトルがなぜ途中に挟まれるのか。
せっかくの余韻が台無しではないか。
映画『イニシエーション・ラブ』でも、ラストシーン、前田敦子の<テヘペロ>的笑顔にオーバーラップして、あのタイトルが出てきてなるほどー、となるわけで、効果的に使わている例はいくつもある。
新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』でも物語の終わりにタイトルを大書する演出が使われている。
僕は何度目かの鑑賞の時、なぜタイトルが最後に来なくてはならないかにハタと気付いた。
あの映画ではラストシーンから恋が始まるからなのだ。
どうしてもその人でなくてはならないと、すでに知っているのに、名前を訊かなくてはならない恋なのだ。
ろくに話もしたことがないのに、好きになって、その人でなければと思い込む。
僕もそういう恋をしたことがある。
だから、最後に大書されたタイトルの意味に気づいた時、心が震えたんだ。