佐野元春&THE COYOTE BAND
DaisyMusic (2015-07-22)
売り上げランキング: 1,485
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首尾よくチケットも入手できて、当日会場に行ってみると、前回入りが悪くてテレビ局の友人から招待券をもらって行ったコヨーテ・ツアーの時とは打って変わっての盛況。
満席に近い入りだった。
聴衆は正直だ。
やはり作品の出来が動員に大きく影響する。
前回は不意打ちの「グッドタイムス・バッドタイムス」でのオープニングで会場にいたすべてのオールドファンを泣かせたが、今回もやられた。
一曲目は「シュガータイム」
何かが間違ってるんだぜ、いつの頃からかという印象的なブリッジが、この歌が書かれた80年代とは違う意味を持って立ち現れる。
そしてその変化が、僕らがここまでいろんなものに晒されて生きてきたんだ、ということを否応なく意識させて、やっぱりすっかり弱くなった涙腺が少し緩む。
そして歌は二曲目の「優しい闇」に進んでいく。
沖縄の基地問題に触れ、それを「柔らかいファシズムの元に生きる恋人たちの唄」(佐野元春Facebookより)に昇華したものだという。
デビュー以来一貫して、都会というしがらみに絡めとられながらも闊達に生きる恋人たちを描いてきた姿勢が、30年の時を超えたふたつの歌のメッセージを結び合わせる。
35周年の記念ツアーに相応しいセットリストの開幕だ。
中盤、最新アルバム「Blood Moon」からの曲を挟んで、35周年にあたっての言葉があった。
「みんなも35年の時を超えて、サバイブしてここにいる」と。
聴衆のそれぞれが、本当にいろんなことのあった自分の半生を振り返った瞬間だった。
そして「ジャスミンガール」
それはヤバイでしょ。
泣いちゃうでしょ。
と溢れてくる涙を拭っていると、隣から嗚咽の声が・・
けっこうみんな泣いてたと思う。
曲が終わると元春から「みんな、しんみりしちゃってるんじゃないの」と声がかかり、怒涛の80年代名曲シリーズへ。
かなりシンガロングしちゃったけど、他のコンサートのように気にならない。
だって凄いんだよ。客席のノリが。
久しぶりに手拍子が大きすぎてステージモニタが利かなくなっているのを見た。
ずい分昔、甲斐バンドの武道館の時、やっぱり手拍子が凄すぎてモニターが聞こえなくなって、甲斐さんが「みんな、ごめん、もう少し静かにしてくれる?」って言った時以来かな。
バンドのリズムというものは、誰かが主導権を持っている。
リズムだからといってドラマーが持っているとは限らない。
山下達郎さんのステージなら、達郎さんのギター(もし弾いていなくても)が。
ミスチルなら底抜けに明るくてパワフルなジェンのドラムが。
スピッツならシンプルなメロディの隙間をうねるように駆け抜けるアキヒロさんのベースが。
そして佐野元春のライブでは、明らかに「オーディエンス」がそのイニシアチブを持っている。
もちろんステージサイドでの音楽的リーダーシップというものはある。
佐野元春バンドでは代々、ギタリストがその役割を担って、オーケストラのコンマスのようにバンドをリードしてきた。
伊藤銀次さん、横内タケ、長田進、佐橋佳幸。
そして今回の深沼元昭も本当に素晴らしい演奏でバンドを引っ張っていた。(長田さんは札幌には来てくれませんでした)
ことにゴールドトップのレスポールを構えた時のあの無敵感はなんなんだろう。ホント聞き惚れるほどのいい音が出てた。
それでもホールを埋め尽くしたオーディエンスの熱量には敵わない。
僕の近くの席で周囲をリードしていたベテラン・ファンはもう手拍子のプロと言ってもいいだろう。
打ち姿の楽しそうな感じにほだされて、みんなその人に付いていってた。
たぶん随所にそういうベテランがいて、会場全体をアツくしていたんだろう。
みんなでこのステージの「演奏」を作っているという実感がとにかく楽しい。
来てよかった、と心の底から思えるコンサートでした。